表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/18

第十三話 虎と馬

お待たせしました。

少し短いですが投下します。

「マーシャ、ちょっと相談があるんだけど……」


 巧亜は夜、マーシャの部屋で体を拭いてもらっている時に話を切り出す。


「何?相談って」


 マーシャは、たらいに浸けたタオルを絞りながら話を促す。まるで長年寄り添った夫婦みたいに、自然な感じで。


「そろそろ旅を再開しようかと思ってんだけど……」


「そっか、行っちゃうんだ……別にあたしに相談なんて要らなくない?コーアは自由な旅人なんだから」


「そんな言い方は無くないか?マーシャとこうなって俺、色々考えてるのにさぁ」


 不機嫌になってトゲの有る返事を返すマーシャに対し、巧亜も食って掛かる。


「考えてるって何よ!あたしは責任取れとか一度も言った事無いし!」

「責任なんて言われて取るようなもんじゃないだろ」

「じゃ、何を考えてるって言うのよ!」


「例えば旅を止めて、此処に残る。そしてマーシャと……マーシャと……オェ」


 結婚する。と続けたかったが、その言葉を発しようとすると吐き気を催した。慌ててたらいに近づき、中に込み上げてきたモノをぶちまけてしまう。


「え?ちょっとコーアどうしたの!大丈夫?」


 マーシャが心配して巧亜の背中を摩る中、巧亜は思った。

(結婚する?俺が?誰と?あ、マーシャとか……結婚……それでまた捨てられるのか……うっ、また、吐き気が……)


 考えれば考えるほど吐き気が増し、身体が震え、そして混乱していく。



 暫くして、ある程度落ち着いてからマーシャと向かい合う。

「ごめん、もう大丈夫」

 心配するマーシャに優しく言葉をかける。


「どうしたの?ホントに大丈夫?あたしのせい?」


「いや、マーシャが悪い訳じゃないよ」

(え?なにこれ?結婚とか考えると吐き気するやん。マジでこれもしかしてトラウマってやつ?)


 巧亜は自分のこの反応を、一方的に捨てられた事によるトラウマになってるのでは、と考えた。


 元の世界での有無を云わさぬ離婚、そして一切の物理的な接触の遮断は、巧亜の心に深い傷を残していたのだ。

 心配するマーシャに教えてやりたいが、本当の事を話す訳にもいかない。だから少しボカして話すことにした。


「俺さ、実は家族に捨てられたんだよね。だからかな、家族とか結婚って言葉に変な反応を起こすみたい。自分でも知らなかったわ」


 苦笑しながら、所帯を持っていたとかは言わず、言葉を濁して話せる分だけ話す。いつの間にか涙が零れていた。


 家族に捨てられたという話を聞いてマーシャはショックを受けるが、それよりも巧亜が心配だった。


「いいよ、何も言わないで良いの。あたしの話を聞いて」


マーシャがゆっくりと静かに巧亜に語りかける。


「この村ではね、巧亜みたいな旅をしてる人から子種を貰ったりするけど、その人の負担に成らないように、その後のことは求めないようにしてるの。だから巧亜はあたしの事を重く考えなくていいの」


 巧亜はマーシャの話をただ静かに聞いていた。


 マーシャは思う。


 何時からだろう?ただの客でしかなかった巧亜のことを意識するようになったのは。


 ミーシャを連れて宿に戻ってきた時?宿のご飯を美味しそうに食べているのを見た時?

 それとも、毎晩の様に巧亜の部屋で楽しく会話していた時だろうか。

 数少ない同年代の友達や、若くして夫を失った未亡人が、巧亜を狙っていると耳にした時、自分の心が酷くざわついたのを覚えている。


 負けたくなかった。取られたくないと思った。この時には既に、巧亜の事を好きなんだと気付いていた。


 夜を共にした時、巧亜がうなされていたり、眠りながらうっすらと涙していたのを見た日も有った。


 マーシャはそっと巧亜を抱き締めながら、子供をあやすかのように頭を撫でる。

 巧亜を今、慰めて癒せるのは自分だけなんだと思う。


 そして、正直な気持ちを吐露する。


「そりゃ、このまま居てくれたらって思うよ。でもコーアはもっと色んな所を旅したいって話してくれたじゃん。あたしはコーアに色んな所を旅して欲しい」


 好きだから。そんな想いを込めながら……


「あたしの事を忘れないでくれたらそれでいいの」


 マーシャに抱き締められながら、何時しか巧亜は眠りについていく。


 意識が闇に溶け込む直前、少しだけ。ほんの少しだけ、心の中の何かが軽くなった様な気がした。




「俺、ちょっとダンジョン見てくるわ」


 次の日、朝食を食べた後に軽くそう言って巧亜は、イルージ村を出ていった。

次話は12/16 更新予定です。


読んで頂きありがとうございます。


ご意見、ご感想お待ちしてます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ