第十一話 討伐隊出発!そして!?
宿屋の一階奥に有るマーシャの部屋は、上の階で巧亜が停まっていた部屋と、同じ大きさだった。
この部屋をミーシャと二人で使っているらしい。
少し大きめのベッドにいつも仲良く寝ていた。
そこに、今は巧亜はマーシャと二人でいた。
食堂で夕飯を食べた後、女将さんに連れてこられたのがこの部屋だった。
「この部屋を使えば良い」
そう言われた時は誰の部屋かは知らなかったからゆっくり出来たのだが、女の子の部屋だと知ってしまった今では、何か落ち着かない。
「えっと、お母さんにコーアと一緒に部屋使いなって言われた時はびっくりしたよ」
マーシャが顔を真赤にしながら話し始める。
「俺が使ってた部屋が貴族に取られちゃったからね」
苦笑しながらそう言う。
「一人、一部屋じゃないと気に入らなかったみたい。ごめんね」
「マーシャや女将さんが悪い訳じゃないんだし、それは気にしなくて良いよ」
気にしないといけないのは今の状況だと考えている。
「コーアはあたしの部屋じゃ、嫌?」
「嫌とかじゃ無くて、ほらマーシャといきなりこうなっちゃったから、実は少し混乱してる」
「だって、コーアは旅人だからいつ居なくなるかわからないし、夜にお喋りしてたの凄く楽しかったし……もっと仲良くなりたかったし……」
「だから昨日あぁなったのは、あたしは凄く嬉しいの」
「そっか、俺も嬉しいよ。色々考えちゃうけどね」
「色々って?」
顔をかしげ、疑問に思っている。検討が付かない様だ。
「まだ、答え出てないから内緒にしといて良い?取り敢えず、今はマーシャと仲良く出来たら良いやって考えてる」
急ぐ旅では無いので、答えを出すのはゆっくりでも良いかと思っている。
今日も二人は仲良しの様だ。
次の日、朝早くから村の外に人が集まっている。
討伐隊のようだ。出発するのか号令をかけ、隊列を揃えている。
二十人程の綺麗に並んだ兵士達の前に、貴族然とした若者が六人近寄り、その中から一番派手な騎士鎧を身に付けた男が声を張り上げた。
「勇気ある者共よ!我らがプエト領が誇る戦士達よ!!
今……これから新しい伝説が始まる。その伝説を作るのは!!我らと!!そしてお前達だ!!!」
「このモザデオ・プエト次期伯爵に着いて来い!!出発だぁ!」
「朝っぱらからテンション高いなぁ~」
巧亜は少し離れた場所から騎士達を見学していた。
《あまり士気の上がりそうに無い演説でしたね》
「アイリスさんは辛辣だなぁ。まぁ、その通りだったけども」
《検索を掛けた結果、モザデオ・プエト士爵という方らしいです。プエト伯爵の嫡子だそうです》
「へぇ~、バッチリ貴族なんだな。しかも嫡子かよ。士爵というのは何なの?」
《簡単に申しますと準貴族位ですね。騎士に成ると士爵位が与えられ、貴族扱いになります。もっと詳しく説明しますか?》
詳しくはいらないと断り、散歩でもするかと歩き出す。
今日も天気の良い日になりそうだ。1日どう過ごすか考えながら途中に出会った村人に挨拶する。でも実は腰が少し痛い。
「大森林といってもただの森だな。こうも木ばかりだと飽きてくるわ」
討伐隊が出発して半日を過ぎ、隊は大森林を行進していた。
「魔物どころか獣一匹すら居ないのでは、何の張り合いも無い……」
「と、申されてもモザデオ様、油断は禁物ですぞ」
モザデオの隣を歩く騎士がやんわりと嗜める。
「村から始祖竜が住む山までは、山の反対側と比べ、危険は無いとは聞いていたがここまで安全とはな」
歩き通しで疲れたのかぼやきが止まらない。
「モザデオ様、兵士たちにそろそろ休憩を与えてやるのはどうでしょう?そろそろ、村人に聞いた池が見えてくると思いますので」
兵士を理由にしてモザデオを休ませようとする魂胆だ。
反対する理由も無いので、モザデオは許可を出す。
ちょっとした池に着くとモザデオ達は思い思い休憩を取る。
兵士達は半数ずつ休憩するようだ。
「池まで着いたらいよいよだな。さっさと森を抜けたいわ」
「しかし、この人数で本当に始祖竜にかてるのでしょうか?」
取り巻きの一人が心配そうに呟く。
「今回、討伐に当たって騎士団長からは精鋭を、親父殿からは資金と装備を揃えて貰っている。そこに我らの腕前だ。勝てないわけがない」
モザデオはえらく自信満々だ。何しろモザデオに勝てる騎士は、騎士団の中に幾人しかいない。
オーガを単身で討伐する騎士団長にも接戦できる。
本当は一騎士では有るものの、次期伯爵にヨイショしてる者や、機嫌を損ねないよう手加減してる者が居るというわけなのだが。
モザデオにはどうしても始祖竜討伐を果たさなければいけない理由がある。
その理由の為、わざわざこんな田舎までやって来たのだ。
絶対に討伐してやるぞ。モザデオの鼻息が荒くなる。
休憩をおえ、池を後にし、山を登っていく。結局、道中に獣も何も出てこなかった。
「もうすぐ頂上だ。皆の者、用意は良いか?我らが勇者になる時がやって来たぞ」
意気込んで兵士達に号令を掛け、始祖竜が住むと云われる頂上付近の広場に雪崩れ込んでいく。
「始祖竜!!覚悟ーー!!」
「あれ?」
「居ないでは無いかーーーー!!」
竜の住み処には誰も居ない所か、何も無かった。
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