第2話
ステータスって言うのは、自分のしか見れない。当たり前だけど、ステータスって言うのは一種のプライベートな情報だからだろう。
という訳で、レベルについての一般的な常識を知らないといけない。それを今から家のメイドに聞いてみようと思う。
さっきメイドに、「聞きたいことがあるから後で部屋に来て。」って言ったから、すぐに来ると思う。
トントンッ、お、来たか。
「入っていいよ。」
「失礼します、アルフレッド様。」
入ってきたのは、メイドのシャルルって子で、歳は14歳らしい。この世界の成人は15歳らしいから、もうそろそろ大人って時期らしい。まだまだ発育途中って感じしかしないけどね。
「シャルル、早速だけどさっきの話の続き、いいかな?」
「どうぞ。答えられる範囲でなら何なりと聞いてください。」
「レベルについて少し聞きたいんだ。」
「レベル、ですか?ステータスにある、レベルですよね?」
「そう、そのレベルだよ。一般的な成人男性、いや、男の農民のレベルとか教えて欲しいんだけど。」
「そうですね...一概には言えませんが、10から15だと思います。農民は意外と農作業で運動して経験値を得られますから、レベルが高い人も居ますよ。」
へー、10から15、ね。
「失礼を承知で聞くけど、シャルルさんのレベル、教えて貰ってもいいかな?」
「ええ、良いですよ。私のレベルは8です。幼少の頃はよく友達と外で遊んだり、お父さんと剣の練習をしたりしましたので、意外と高いんですよ?」
レベル8で戦わない女の中では強い方、か。
「何故、そんなことを聞くのですか?」
俺が黙っていたからか、何気ない感じでシャルルが聞いてきた。
「あ、ああ、いやなに、ちょっとした好奇心だよ。普通の人のレベルとか知っておけば、強いひとのレベルがどの程度凄いのか分かるしね。」
「そうですか。強いひとだと...例えば、エーデル王国第一騎士団団長はレベルが40に届くらしいですよ。多分王国で一番強いって言われてます。」
王国一番で40?本気か?そんなのすぐ抜かせるぞ。
「そっか、ありがとう、シャルル。これ、お礼ね。」
そう言って俺は銀貨1枚をシャルルの手に握らせる。
「こ、こんなに...頂けません!」
「いいからいいから、これでなんか欲しいものでも買いなよ。」
「はぁ、ありがとうございます。」
この世界の通貨は全て硬貨を使い、その価値はざっとこんなものだと思う。
鉄貨: 約10円
銅貨: 約100円
大銅貨: 約1000円
銀貨: 約10000円
金貨: 約100000円
白金貨: 約1000000円
これは、水がコップ1杯で鉄貨3枚から4枚だったことから、自動販売機に売ってるミネラルウォーターの値段とか考えてざっと計算したもの、あまり当てにはしないでほしい。
まあ、1歳の子供が普通1万をぽんと出せないだろうが、俺は一様貴族、それ位造作もない事さ。
「それじゃあ、またなんか知りたいことがあった時はよろしくね。」
「私で答えられることなら、いつでもどうぞ。」
そう言って、メイドのシャルルは部屋を出ていった。まあ、お金を貰って嬉しそうな表情を見て、俺もいい気分になったから、お金をあげたのは悪い事じゃないよな。
それにしても、この世界の人間は、チート持ちにとってはクズ同然だな。できれば魔物のレベルとかも聞いておきたいところだけど、まあそれは追々知っていけばいいか。
とにかく、どのくらい強くなったのか知らないとな。
まだ1歳だし、肉体に変化はないから、そんなに凄い変わったわけじゃないと思うけど...
とりあえず、俺の今の体で持てそうで持てなさそうな物は......
お、これ何かどうだ?
俺が今目に付いたのは椅子だ。だが、椅子と言ってもそんなに大きなやつじゃなく、丁度良さそうな大きさだ。背もたれまで見ても俺の頭のてっぺんほどで、ただの1歳には多分絶対持ち上げられない。
よし、ちょっとやってみるか。
3、2、1、ん!
ありゃ?
まあまあ重いけど、普通に持ち上がるぞ?
感覚的に言うと、中学生に成り立ての時の筋肉で持ち上げるくらいに軽い。
俺今、中学生くらいの筋肉が付いてるのか?
てことは、ステータスのSTRの5、これはつまり、筋力とかは中学1年の初期レベルか?
だいぶやばい1歳児じゃないか?ってか、やっぱり百万倍はやりすぎたな...
(ピコン)
ん?まさか、またレベルアップしたのか?
ちょっとステータスみて......ああ、やっぱり上がってるわ。
Lv.6 アルフレッド・バッカス/1歳/バッカス男爵家三男
・HP:18/18
・MP:18/18
・STR:6
・DEX:6
・AGI:6
経験値:2/6
備考) 女神エレーヌの加護×3
ここまで来ると化け物だな。さっさとバレないようにレベルあげまくって、この家を出て、暫くは悠々自適に暮らそう。それから、出来るなら自分の国でも作って、俺の持つ知識とか色々使いながら、俺の名前とかを死んだ後も残るようにしたいな。
国名は、アルフとかにでもするかな、自分の名前から取ったけど、安直過ぎたか?
まあそれはおいといて、すぐに家を出るのは決定事項だ。正直、一緒に誰かついてきて欲しいが、まだそこまで信用できるものがいない。完全に信用できる相手が出来るまでは、ひとりでいるしかないだろうな。
あ、そうだ!この世界には冒険者という立派な仕事があるじゃないか!
冒険者というのは、名前ばかりで、薬草を取ってきたり、魔物を倒したり、商人を護衛したり、傭兵として戦争に参加したり、まあ、所謂何でも屋だな。
だけどこれも立派な仕事、その上、年齢制限なし!俺には打って付けの職業だぜ。
よし、冒険者ならレベル40くらいにしとけば充分って考えると、まあ普通に毎日腕立て50回、腹筋100回、背筋100回すれば、多分レベルはすぐに上がるだろうし、それとレベルとは関係なく体を柔らかくするために柔軟を毎日しよう。
待て待て待て、それだけで本当にいいのか?
なんか忘れてないか?
うーん......
あ!そうだ!この世界には魔法があるじゃないか!
すっかり忘れてたわ。色々思い浮かべて楽しみにしてたのに。
とりあえず、コップ1杯の水でも出してみるか。
俺は魔法がどうなるかは知らないけど、魔力をエネルギーとして考えれば、そのエネルギーと質量にはE=mc^2の法則が成り立つ。その通りに魔力というエネルギーをH2Oという物質に変換していく。
魔力、魔力、手のひらにエネルギーを集める感じで......
このエネルギーを水に変換、コップに注ぐ......
...............ちょろちょろちょろ。
おお!出来た!出来たぞ!やった!やったぞ!!
魔法が使えた!もう最高の気分だ!
......感極まって泣きそうになっちまった。いやまあこれは仕方ないよな。アニメとか見てるやつは1回くらい夢見るよな?魔法使えたらって夢見るよな?
あー、最高だわ。あ、そういや、あれってどのくらいMP使ったんだ......?
(ピコピコピコピコピコ.........ピコン、新しい魔法を会得しました。『物質創造魔法』)
あれ?なんか、めっちゃレベルアップしたな、しかもなんだ、最後の......物質創造魔法?もしかして、水魔法とかそういうのじゃなくて?いきなり万能系?
とにかく、ステータスみてみないと......
Lv.40 アルフレッド・バッカス/1歳/バッカス男爵家三男
・HP:120/120
・MP:153/154
・STR:40
・DEX:40
・AGI:40
経験値:37/40
備考) 女神エレーヌの加護×3
習得魔法) ・物質創造魔法 熟練度:1
あー、えっと、いきなりレベル40ですか、そうですか...
しかもなに?物質創造魔法?本当に水魔法とかじゃなくて?
もしかして、エネルギーと物質の関係性から理論的に考えた結果か?そうなると、別の物質も全部作れちゃうことになるよな......
これ、考えてみたらめっちゃやばくね?そして凄くね?
あー、こんな能力あったら地球でノーベル賞取りまくり、とまでは行かなくとも研究がものすごく進んだだろうなー。でも、コップ1杯の水で1MP消費するなら、鉄とか銅とか銀とかつくると、だいぶMP消費しそうだな。とりあえず、この魔法は保留だな。
あ、ていうか、熟練度とかあるけど、これあげるとどうなるんだ?もしかしてMP消費が少なくなったりするのか?いつか練習したりして試してみるか。
魔法使ってレベル上げるとMPがいつもより多めに上がるんだな。多分筋トレとかしながらレベルあげると、STRとかが多めに上がったりするのかもな。これもまた実験だな。
あー、やばい。もう王国騎士団団長さんとやらにレベルが追いついちゃったよ。1歳よ?まだ俺1歳よ?
これは楽しくなりそうだ。国とか作るのも夢じゃないかもな。