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私の恋人

作者: 刺身大好郎

数ある中、この小説を読んでいただきありがとうございます。

この話は、とある女性と、秘密を抱えた男性の体験談です。


彼とはじめて出会ったのは、6歳の息子がアパートの前の木にサッカーボールを引っ掛けて困っていた時だった。

彼は木に登ってボールを地面に落としてくれた。そして彼は息子に向かって言った。

「将来プロサッカー選手になって、ママを喜ばせてやれよ。」

その時はただの優しい人だと思った。

次の日の朝、私が仕事に出るときに隣室の扉の鍵をかけているスーツ姿の彼を見つけた。

「おはようございます。昨日はどうもありがとう。」

「いえいえ、息子さんがサッカー選手になれるのを願ってますよ。」

そのあと、2、3軽い雑談を済ませて仕事へ行った。

帰ってくると、息子が彼とボールを蹴りあっていてとても驚いた。

「おかえりなさい。息子さん、すごいシュートをする。彼は絶対にいい選手になるね。」

「ええ、きっとそうね。」

それから毎日のように、彼と顔を合わせた。

その内私は、彼を亡くなった主人と重ねるようになっていって、半年が過ぎる頃にはもう交際を始めていた。

彼はイラストの仕事をしていて、基本は家でイラストを描いているらしい。

たまにスーツを着てどこかへ出かけていた。その時は描いたイラストを見せに行ってるんだと思ってた。

スーツを着た日の夜は、必ず息子にプレゼントをくれた。サッカー用のスパイクだとか、息子の好きな選手の背番号の入ったシャツとかね。

彼に結婚の話をしたら、よくない顔をされた。

どうして?って聞いても、はぐらかされて。それで私怒ってしまって、一日話さなかったの。

次の日謝りに行こうって思って、彼の部屋に行ったんだけど、彼はいなくなってた。

彼は携帯電話を持ってなかったから連絡は取れないし、とても心配だったし、後悔した。

その日の内に謝っておけばよかったって。

それから2日が経って、警察が尋ねてきたの。

「突然すみません。実は半年前に脱獄した泥棒がこの近辺にいるらしくてですね。顔は...これです。」

写真を見た時、とても驚いた。あの優しい彼が、まさか、泥棒だったなんて。

その場に崩れそうになった私を警察の方が支えてくれた。

その時に彼とあったことを話した。そのあと署に連れて行かれて、もっと詳しく話した。

一ヶ月もしない内に彼は捕まり、刑務所に入れられた。

彼が再び投獄されてから、四ヶ月経った日に面会に行ったわ。

彼と離れたあの日から、ずっと聞きたかったことがある。

「あなたが息子にくれたプレゼント。あれも盗んだの?」

「あぁ。」

「あなたが私に近付いたのは、私を利用するため?」

「そうだ。」

「私のことを少しでも愛していたの?」

彼は少し黙ってから、口を開いた。

「君のことは始めから好きじゃなかったさ。誰が君みたいなやつを好きになるんだ。君は自分によっぽど自信があるんだな。せっかく喧嘩がいい原因になって離れたのに、なんでまた会いにくるんだ。もう二度とここへ来ないでくれ。君の顔なんか二度と見たくない。」

私は涙を堪えて一言言った。

「そう。」

ちょうど面会時間が終わり、私は部屋を出た。そこから私は一言も話さなかった。

ただ、ドアを閉める時に、彼が涙を流しながら看守さんに連れていかれていくのが見えた。

それを見て、私も釣られて泣いてしまった。

コメントなどありましたら書いて頂けると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヤツはあなたの心を……なんて言ったらクサイですね。ごめんなさい
2016/05/23 14:15 退会済み
管理
[一言] 悲しい話ですね。 二人の心情や、どうして泥棒になったのかなど。 細かな情報があると、もっと深みが出ると思います。
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