表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

執筆などのつれづれ

一人称小説で()使って心の声書くの、変に思わないものなの?

作者: 風待月

 あと一枚。選択を間違えなければ終わる。

 彼が持っているトランプ二枚のうち、ハートの七を引けば僕の勝ちだ。

 これでもう一二回目だ。お互いにジョーカーを引き続けてペアが作れず、いつまで経っても終われない。やっぱり二人で勝負するのに、ババ抜きなんて選ぶべきでなかったか。

 もういいかげん終わらせたい。だから僕は手を伸ばすことなく、二枚のカードと彼に注目する。

 すると彼はチラチラと、僕から見て左側のカードに視線を送っている。こっちがハートの七か。


(いやいや。待てよ? ブラフかもしれないじゃないか)


 彼は素直な性格じゃなさそうだ。そんなにわかりやすかったら、勝負は長引いていない。


(いや、裏の裏をかいて……ってことも)


 これまで僕は勘に従って手早く札を選んでいたが、ここで勝負を決めるために様子を窺い始めたことに、彼が気づいていないはずないだろう。

 交代で訪れている絶対絶命の状況は、今は彼の番だ。だから後がなく、ハートの七を死守しないとならない。

 考えてみれば、どうして今日会ったばかりの男と、こんな勝負することになったんだろう? しかもコンビニでエロ本とティッシュを買って「すぐ使うので袋はいりません」と断って剥き出しで持って帰るという、恥ずかしい罰ゲームを賭けて。

 経緯はともかく、それは避けたい。負ければ明日からなんて噂されるか、想像すると嫌になる。言い出したのは向こうからだけど、やっぱり嫌なんだろう。全力で勝ちに行く気迫に溢れている。


(さぁ、どっちにしよう……)


 迷いながらも、僕は手を伸ばした。



 ○  ○  ○  ○  ○  ○



 表題通りの内容です。

 こういう文章、多くの人は変に思わないのでしょうか?

 自分が即興で作った文章が稚拙なのは置いといて。

 罰ゲームのくだりが面白くなって例文が微妙に長くなったのも置いといて。

 

 これだけの説明では、ほとんどの方が理解できないと思うので、もう少し詳しく説明しますと。

 キャラクターの声に出さない台詞、モノローグや心の声といったものを、小説でどう表現するかという話です。


 これは作家さんごとに個性特色あると思います。

 一人称文章・三人称文章で書き方は変わるでしょうし、心のセリフそのままを書くにしても、使う記号が異なるでしょう。


・丸カッコ ()

・山カッコ 〈〉

・ダブルクォーテーション “”

・冒頭にダッシュ ――


 こんなところかと思いますが、この場合ならば丸カッコを使う人が、昨今では圧倒的ではないかと思います。通常のカギカッコ「」を使ったセリフと同じように、記号を入れ替えて。

 これそのものに不満はないです。「~は~と思った」と地の文で書かなきゃいけないなんて『べき論』を使うつもりもないです。小説の書き方なんて自由です。面白ければそれでいいです。



 ただ、例文のような書き方があると、自分は読むのに引っかかるのです。

 全体が一人称文章で書いてあるのに、心の声が丸カッコで区切られているのが、理解不能なのです。


 丸カッコなしで問題ないよね?

 なんのために付けてるの?

 一人称の小説って、登場人物が語り手になって書かれた文章だよね?

 例文の場合なら、地の文は『僕』が語ってるんじゃないの?

 地の文の『僕』と丸カッコの『僕』は違うの? 二重人格なの?

 それとも丸カッコってテレパシー的な使い方もするから、誰かの声を電波受信してるの?


 こんな感じの疑問が湧きます。


 例外的に一人称小説でも、こういう書き方に納得できる場合もあります。

 明確に時系・時点が違う場合です。



 ○  ○  ○  ○  ○  ○



「あぁ、いいよ。荷物と一緒に運んでおくから、そこに置いといてくれ」


 ダンボール箱の中になにが入っているかなど、あまり気にしなかった自分は、持ってきた彼に気軽に返事した。

 とはいえ、いま考えればの話だが、予感めいたものは感じていたのかもしれない。あの時の自分は思った。


(変なもの持ってきたんじゃないだろうな……?)


 男なら子供の頃、誰でもそうかもしれないが、彼には変な蒐集癖のあるのを思い出したのだ。

 あそこまで変なものが入っていたとは、完全に想像の埒外だったが。



 ○  ○  ○  ○  ○  ○



 今度の例文は比べて短すぎるだろうというツッコミは置いといて。


 このように回想する形の一人称小説なら、なにも変に思いません。地の文を語る『今の自分』と、セリフ・心の声の『過去の自分』が、明確に違うのは理解できるので。


 でも大抵の場合、そんな風に明確になっていない。気分で丸カッコでくくってるんじゃない? と思ってしまうような心のセリフを置いてるような気がするのです。

 そして書き方指南などを調べて見ても、これが言及されていることは、ごくわずかに思います。作法の中で話題に上ることもまずありません。


 これ、大事じゃないの?

 ほとんどの人はスルーして読めるの?

 どうして?


 作者としては、自分は三人称文体で書いて丸カッコ使うか、一人称では完全語り手なモノローグ調ナレーションで書くので、どうでもいい話なのですが。

 読者としては、そんな疑問が消えないため、こんなエッセイを書いてみました。


 それらを踏まえてもう一度。

 一人称小説で丸カッコを使って心の声を書くの、変に思わないものなのでしょうか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 書き手側としては気になるとこではある。 読み手側目線だと面白ければどうでもいい。 つまらなければ正しい文法だろうが評価するに値しない。
2022/10/22 13:34 退会済み
管理
[一言] なろう連載されている「世界最強の後衛 ~迷宮国の新人探索者~」の書籍版を読んでいて、同じ疑問を抱き検索してきました。 私は大手出版社の編集や校閲は気にならないのかが特に疑問です。
[良い点] 楽しく検討させて戴きつつ、読ませて戴きました。 [気になる点] 私の感覚だと、逆です。 カッコが有ったほうが読みやすいです。 私の場合は下記の分類で使ってます。 ・カッコが無い部分: 説…
2021/10/04 21:06 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ