#55
「ちょっと、要! どういう事よ!」
美代子と早乙女藍羅がいなくなった瞬間、途中から見ていたと思われる千寿が、要に問いかけた。「ちょっと!」と何度も言ってくる千寿に、蘭が「しつこいです!」と一喝した。それが気に触ったらしく、反論しようとすると、要が口を開いた。
「……実は、僕の今の親はあの人になってるみたいなんです」
それから、要は自分の過去の事について話し始めた。
要は幼い頃、母子家庭だったらしい。そんなただ一人の母 香代子を、まだ幼い頃に亡くした要は、香代子の妹の美代子一家に預けられた。それ以来、美代子が新しい母親になった。あれでも毎日のように香代子の病院に通っていた美代子は、姉の香代子に信頼されていた。それ故らしい。そんな、香代子の病院にいた時に知り合ったのが早乙女藍羅だという。身体が弱かった早乙女藍羅の遊び相手になった要は、すぐに早乙女藍羅と仲良くなった。そんな早乙女藍羅も、香代子や美代子に好かれていたらしい。許嫁という話も、当時ちょこちょこあったという。
「美代子さんは、最初はいい人だったんです。だけど、次第に本当の姿が見えてきてしまって……。あの家にはいられないと思い、ここに入居する事を決めました」
要の話を訊いて、蘭は少々涙ぐみ、玲央は理解に苦しんでいた。四季はというと、悲しい気持ちや怒り等でいっぱいになった。
「全然知らなかったわね……」
「そうなんです。要は、そういうつらい過去があっても、人に悟られないようにしてるんです。嫌な事があっても、決して表に出さないんです。知らなくても、無理はありません……」
要の過去を知っていた菜乃花が、千寿の言葉に頷く。
要はなんて強い人なのだろう。そんな過去があっても、いつも笑って、四季に優しくしてくれて。そんな人を一瞬でも疑ってしまった自分を、四季は恨んだ。
四季は、早乙女藍羅がしたのよりも優しく、要を抱き締めた。要は、恥ずかしそうに少し頬を赤らめる。
「絶対に早乙女藍羅なんかに渡さない」
「……うん。大丈夫だよ」
要も、四季を抱き締めた。
「美代子ってオバサンに、反論するんすよね……?」
「勿論。勝負は……一週間後だ」




