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#50

 ベランダで、四季は夜風にあたっていた。一階では、住人達が楽しそうに騒いでいる。その声を聞きながら、フェンスに寄りかかった。


「何してるの?」


 ガラガラ、というベランダのドアを開ける音と共に、そんな優しい声がかかる。振り向かなくてもわかる、要の声だ。


「……夜風にあたってたの」


 要は「そうなんだ」と言いながら、四季の隣に立つ。その後は暫く沈黙だったが、それがなんだか心地よかった。


「……そういえば、お誕生日おめでとう」


 ふと、要は口を開く。


「ありがとう。なんか、いつも祝う側だったから、とっても嬉しかった。皆、こんな気持ちだったんだね」

「……そうだね」

「あっ、要君の時もちゃんと祝うからね。期待しとくんだぞっ」


 あはは、と要は笑う。そして、感謝の言葉を口にした。

 再びの沈黙。そして、再び要が口を開いた。


「……あのさ、四季ちゃんって、好きな人とかいる?」


 突然の問いに、「へっ!?」と驚きの声をあげる。頭の中で物凄くパニくる四季を、要は真面目な顔で見つめた。

 ――これは、マジで訊いてきている。

 表現が可笑しいと思うが、本当にそうなのだ。笑いが入らない、マジな表情。本気で知りたがっているみたいだ。

 返事に困っていると、痺れを切らしたのか、要が先に答えた。


「僕はいるよ」


 その言葉に、ドキッと胸が高鳴る。

 なんなの、この感じ。今まで体験した事のない感情に、四季は自分自身に問いかけた。

 そんな四季をよそに、要はゆっくりと口を開いた。


「……それが四季ちゃんだって言ったら、どうする?」


 更に高鳴る胸。速まる鼓動の正体を悟った四季は、頬を赤く染めながら答えた。


「嬉しい。私も、要君が好き」


 心也にもなく、亜季にもない、要にだけある感情。それは、『好き』という事だったんだ。あの時感じたもやもやも、全てこれのせいなのだろう。

 要は、頬を紅潮させながら、四季の頬に触れる。そして、ゆっくりとゆっくりとお互いに顔を近づけていき、唇を重ねた。

 離した後、二人笑いあった。そんな時、ガラガラ、というベランダのドアが開く音がした。二人、肩をビクッと震わせる。すると、住人達が笑いながら出てきた。


「うおっ、四季先輩と要先輩、こんな所で何してんすかー?」

「もしかして、二人でイチャイチャとかぁ?」


 蘭と玲央の中学生コンビが、四季達を冷やかす。その二人の反応が、更に冷やかさせた。そんな中、心也だけが浮かない表情をしているのを、千寿は見逃さなかった。

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