#47
十二月。本格的な冬の季節がやって来た。
あの恋バナ後も、菜乃花の視線は揺らがなかった。心也を追っては、四季や蘭に冷やかされ。四季も、その反応を楽しんでいた。ただ、あの時感じた感情に疑問を抱きながら。
そんな時、予想もしていなかった最悪な事態が起こった。
とある日。久々、もとい初めて菜乃花とひなぎく荘に帰った時の事。
「たっだいま~!」
元気よく挨拶するも、返事がない。それどころか、何か話し声がする。それも、ちゃんとした会話ではなく、片方が一方的に叫んでいるようだった。
なになに? と、四季と菜乃花は靴を脱いで中に入る。心也と玲央がこちらに背を向け、目の前にいる人と話している。だが、この角度からはその人は見えなかった。
「何してるの?」
心也達に問う。すると、心也と玲央は振り向き、心也が口を開いた。
「こいつが勝手に入ってきた」
「? こいつって誰――」
問いながら先程まで心也達と話していたその人の顔を見る。その顔を見た瞬間、四季は明らかに嫌そうな顔をしたまま、硬直した。その人は、四季を見て叫ぶ。
「姉ちゃん!」
姉ちゃん? と、第三者達は一斉に首をかしげる。当の本人は、
「だ……誰ですかぁ~?」
と、知らないフリ。隣にいる菜乃花も、誰なのかと聞いてくる。だが、答えたくない。そう思っていると、四季を姉ちゃんと呼ぶその人が、答えた。
「お前の弟だよ!」
「知ってるわ! いちいち言わなくていい!」
その人の解答に、ツッコミを入れる。そう、その人とは、離れて暮らす四季の弟なのだ。
「お……弟君?」
「そうです。弟の亜季」
少々驚いた表情をしている第三者達に、事実を伝える。チャラく「ども!」と言う亜季に、菜乃花は笑顔でよろしくね、と返した。そんな事をよそに、四季は亜季に訊ねた。
「何で来たの」
「べつに何でもいいだろっ」
「来てほしいなんて、一言も言ってないんだけど?」
「いいだろべつに~。母ちゃんだって、姉ちゃんの事心配してたし」
余計なお世話……と四季は呟く。第三者達には、四季がどうしてこんなに亜季が来ている事を嫌がっているのか、いまいちわからなかった。
あれこれ亜季と言い合っていると、何事だ、と蘭と千寿が自室から出てきた。どうやら騒いでいるのが聞こえていたらしい。
「わっ、誰ですか?」
亜季を見た蘭は、驚き訊ねた。その質問には、菜乃花が答えてくれた。
「へぇ、四季って兄弟いたのね」
意外、とでも言いたげな目で、千寿はそう溢す。そんな千寿をよそに、蘭は早速亜季に自己紹介をした。亜季も、同じようにする。すると、不意に蘭が亜季に訊いた。
「何歳なんですか?」
「中一っす!」
「おぉ、じゃあ、後輩君ですね!」
蘭と亜季は、つい先程知り合ったばかりとは思えないほど、仲良くしていた。その中に、玲央も自然と入る。




