#45
十一月。木々の葉も落ち始めたある日、四季はスキップをしながらひなぎく荘をめがけていた。
ひなぎく荘に着くや否や、勢い良くドアを開ける。
「たっだいま~!」
満面の笑みでそう声をかけると、既に帰ってきていた要が訊ねてきた。
「機嫌いいね。何かいい事でもあった?」
「ふっふっふ」
四季は変なふうに笑う。よくぞ訊いてくれました! と言わんばかりの顔で鞄の中にある物を出した。
「見てよ、これ!」
要に差し出した五枚のプリント。皆ももう、予想がついているのではないだろうか。あれは、先日行われた二学期の中間テストである。
「おおっ、凄いじゃん!」
要はテストの点数を見て、声をあげた。だって、全て六十点以上。四季としては上出来だった。
「でしょでしょ? 要君に言われて勉強してよかった~」
ありがとね、と要に笑いかける。すると、要の手が四季の頭の上に乗った。
「次も頑張ろうね」
要は優しく頭を撫で続ける。
(……なんか、落ち着く)
要の手が離れた後も、四季は余韻に浸っていた。すると、バンッ! と101号室のドアが開いた。中から千寿が出てくる。
「あれ、千寿さん、もう帰ってたんですか?」
「ええ、まぁね。だって、今日何かあった気がしたから」
そう言って、ん゛ん゛っとわざとらしく咳払いをする。すると、先程と同じようにバンッ! とドアが開いた。今度は102号室のようだ。出てきた蘭に問いかける。
「あれ? 蘭、今日委員会じゃなかったっけ?」
「早めに終わらせてきたんです。今日、何かあった気がしたので」
そう言って、千寿のように咳払い。二人とも、わざとらしすぎる。
「もう、二人とも、わかってますからいちいち何かしなくていいですよ?」
皆が帰ってきたらケーキ食べますから、と続ける。すると、千寿と蘭の顔はたちまち明るくなった。
「あらっ、覚えててくれたのっ?」
「さすが、四季先輩ですっ!」
はいはい、と適当に流す四季。そう、今日は千寿と蘭の誕生日なのだ。偶然にも同じ日。四季としては一日で済むので楽だと少々喜んでいたが、当の本人達はそれを物凄く嫌がっていた。
「こんな生意気な小娘と同じ誕生日なんて、屈辱的だわ」
「それはこっちの台詞なんですけどー?」
こんな具合に。だが、いざケーキを出すと、子供のように喜ぶ二人だった。なんだかんだ言って、二人は似た者同士なのかもしれない。取り合えず、笑顔があればいいのだ。そう思う四季であった。




