#43
今日は、何故か物凄く雨が降っていた。雷は鳴り響き、窓の外を見ると、木々や草花があり得ない程揺れていた。
(……台風、かなぁ)
はぁ、とため息をつく。すると、「わぁ!?」という声が二階から聞こえてきた。
「皆さん、大変っす~!」
ダダダダッと階段を駆け降りてきたのは玲央。そして、リビングにいる九人の住人にこう告げた。
「部屋の天井がっ、雨漏りしてるっす!」
玲央の言葉を聞いた途端、住人達は驚愕する。そして、揃って二階へと駆け上がった。
二階は男性フロア。ひなぎく荘の男性達は、急いで自室のドアを開けた。結果、雨漏りしていたのは、201号室の要と202号室の康太、そして203号室の玲央の部屋だった。肩を落とす三人と共に、一階へ戻った。
「でも、どうして雨漏りなんてしたんでしょうか?」
菜乃花が問題提起する。皆は頭を捻らせるが、四季には答えがわかっていた。
(たぶん……いや、十中八九康太さんだよ!)
何故康太なのか。それは、少し前の事だった。
康太は理科実験が好きだ。ひなぎく荘の自室で、自分で実験セットを作ってしまう程、好きなのだ。それ故に、住人達は気づいていないが、実験を頻繁に行っていた。実験というものは、成功する時もあれば、失敗する時もある訳で。実験に失敗すると、壁や天井を破壊してしまう事もしばしば。実際、前に四季が康太の実験失敗した現場を見た時も、そうだった。
康太がそのような過ちを犯した時、四季は勿論叱ったのだ。だが、康太は聞こうともしなかった。つまり。
(犯人は、絶対康太さん!!)
独りで勝ち誇ったかのようなポーズをとっていると、智宏が「そんな事より」と話を切り出した。
「今夜、どうするつもりだい? あれじゃ寝れないだろう」
「そうっすよね~……」
玲央は更に肩を落とす。すると、千寿が冗談混じりに言った。
「じゃあ、無傷な女子部屋で寝ればぁ?」
要と玲央は「はぁ!?」と目を見開く。クスクスと笑う千寿に、智宏も賛成した。
「それがいいんじゃないか? 男二人三人で寝るなんて、男臭いしさ」
たぶん、これも冗談だろう。そうでなくては困る。
智宏は楽しそうに、部屋が雨漏りした三人に訊ねた。
「さあ、誰の部屋にするかい?」
女性軍の目は、「本気で言ってんのこの人?」。そんな中、玲央は急に真剣に悩み始めた。
「まぁ、俺なら……蘭、かな」
「拒否します」
蘭は即座に却下。玲央は部屋の隅で小さくなった。
智宏は、答えそうにない康太に問うた。
「康太は?」
「……ソファ」
「誰の部屋かって聞いているんだ」
康太はどんな時でも安定だ。智宏の質問に真面目にそう答えた。
智宏は少し苛立った様子で、残る要に訊ねた。自分は来ないと思っていたのか、要は肩をビクッと震わせた。
「ぼ、僕は……四季ちゃんかな……」
要はそう呟く。四季は、思わず「えっ」と声を漏らした。だって、要は菜乃花を選ぶと思っていたから。
(……なのに、何で私!?)
四季は、驚くのと共に、焦った。これはマジな話なのだろうか。マジだとしたら、四季は要と一緒に寝るのか?
(えええええええ)
バクバクと、心臓の音が煩い。すると、その音をかき消すかのように、蘭が口を開いた。
「やめましょう、こんな変な話」
「そうねぇ。一線を越えちゃったりしたら、マズいものねぇ」
千寿も頷く。さっきまでの考えはどこにいったのだろうか。四季はホッとする反面、少しガッカリもした。
(……は? ガッカリ?)
四季は自分の気持ちに、首をかしげた。
そんなこんなで、要と康太と玲央は、三人一緒にリビングのソファや床で寝る事になったのだった。




