#41
心也が通う私立山吹学園は、この時期になると学園祭の準備が始まる。
山吹学園の学園祭は、私立校という事もあり、初等部から大学部まで一斉に行われる。つまり、小学生から大学生までがそれぞれ違う出し物をする、大規模なものだ。そんな中、心也の高等部一年A組はお化け屋敷をやる事になった。学園内でも人気だったお化け屋敷は、くじ引きで高等部一年A組のものとなったのだった。だが、心也としてはあまり喜ばしい事ではなかった。お化け屋敷をやるという事は、お化けにならなければいけない。お化けになるという無意味且つめんどくさい事はないだろう。だが、心也は、お化け役をやらない。勿論、最初は勧められたが、心也の一言とはなんて強いものだろう。「やらない」と言っただけで、接客係に任命された。
そんな感じで時は早々と進み、学園祭当日。山吹学園は、物凄い盛り上がりを見せていた。
心也達のA組も、なかなか繁盛していた。意外とリアルで怖いらしく、お化け屋敷好きのリピーターもいた。その人達をガッカリさせまいと、お化け役のクラスメイト達は、張り切ってお客達を驚かす。そう考えると、接客係は楽なものだ。他の接客係のクラスメイトも、暇なのか、他校の友達らしき人と駄弁っている。だが、心也にはそんな相手も、誘った人もいないのでただただボーッとしていた。その時。
「おーい、心也っ」
聞き覚えのある声がしたかと思うと、その人物はこちらに向けて手を振っていた。何故アイツがここにいるんだ、と疑問に思っていると、その人物は近づいてきた。
「あはは、暇だったから来ちゃった」
てへぺろ、と四季は舌を出す。何も返さないでいると、四季は「凄いね~」と言いながらお化け屋敷と化したA組の教室を眺めていた。心也が内心、とても焦っている事も知らずに。
はぁ~と落ち着き、取り敢えず質問をした。
「何で学園祭があるってわかったんだ」
「何でって、心也の机の上にプリントが置いてあったから。学園祭の」
「勝手に入ったのか」
「……てへ?」
可愛くして、許してもらおうとする四季。心也は、再びため息をついた。すると、四季は「それと」と口を開いた。
「心也が学校で楽しくやってるか、気になったし?」
急に体温が上がる。それを隠すように、「余計なお世話だ」とそっぽを向いた。
本当は嬉しかったのだ。誘ってもないのに来てくれて、心配されて。上手く表現できない自分を憎んだ。
「……と、取り敢えず、入ってけよ。今ならタダにしてやる」
教室を指で示す。伝わっただろうか、四季に対する感謝の気持ちが。
四季をチラッと見る。四季は、「やったー!」と言いながら入口へ向かっていった。後を追う。
「優しいじゃん。いつもはケチで意地悪なのに」
「一言余計だ」
楽しそうに入っていく後ろ姿を見送った。
伝わったかどうかは微妙なところだが、少しずつ、近づいていこうと思った心也だった。




