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#39

「皆さん! 私の話を聞いてください!」


 階段を駆け降りた四季は、住人達がいるリビングで声をかける。住人達は一斉に振り向いた。その中で、要が心配そうに訊ねてきた。


「四季ちゃん、寝てなくて大丈夫?」

「うん、たいした事ないと思うし」


 要の質問にそう答え終え、住人達に向き直り、すぅっと息を吸った。


「皆さん、ヒナギクの花言葉って何だか知ってますか?」


 四季の質問に、住人達は首をかしげる。ただ、花好きの菜乃花はわかった表情をしていた。


「ヒナギクの花言葉はいろいろあるんですけど、その中で印象的だったのは『平和』です」


 この前、菜乃花と花の本を読んでいた時を思い出す。


「……このシェアハウスは、もともと管理人の叔父と亡くなった叔母の新居となる予定でした。でも、完成する前に、叔母が死んで。だから、叔父は『ひなぎく荘』って名前をつけたんです。『平和』という花言葉のある花を。だから私は、こんな争いはいけないと思うんです。この十人じゃないと、ダメなんです。だからっ――」


 四季は、視線を千寿へ向けた。


「――千寿さん、ここを出ていかないでください!!」


 四季にそう訴えられ、千寿ははぁ……とため息をついた。そして、めんどくさそうだけど照れ臭そうに、返した。


「……四季にそう言われなくても、もともと出ていくつもりなんてなかったわよ。めんどくさいし、今更住む所が見つかるとも思えないしね」

「千寿さんっ……!」

「そんな事より、アンタ、恥ずかしい事簡単に言いすぎよ。こっちが照れるじゃないっ」


 千寿の言葉が予想外すぎて、四季は思わず笑みが零れた。千寿の名前を叫びながら抱きつこうとする四季を、千寿は華麗に避けた。四季は「ごふっ」と声を漏らしながら、床に顔面を打つ。


「あの~、そんな事より、四季先輩、本当に身体のほうは大丈夫なんですか?」


 蘭に問われ、一瞬顔のほうかと勘違いをする。「風邪とか」と言われ、漸く理解した四季は苦笑いをしながら答えた。


「大丈夫だってば~。気絶しただけだって」

「そうですか? ならよかったです」


 心配された事に少々嬉しがっていると、それを吹き飛ばすような一言が心也から飛んできた。


「大丈夫だよな。バカは風邪を引かないって言うし」

「なっ……バカバカ言いすぎだよ、バカー!」

「お前には負けるわ」


 こうして、ひなぎく荘は笑いに包まれた。

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