#03
次の人は、なかなか喋りだそうとしなかった。四季はイライラしてきてしまい、
「次、誰って……」
(あー、なるほど……)
菜乃花の次を見ると、綺麗な金色の髪を持った女の子が座っていた。たぶん、ヨーロッパの方の人だろう。だから、日本語が通じなかったんだ。
(え……でも、私英語喋れないし……)
「あの……誰か英語喋れる方いませんか?」
四季が助けを求めると、少女が口を開いた。だが、その言葉は女性に向けてのものだった。
「そこの方とか喋れないんですか? いい歳してるんだし、喋れないとですよ?」
「うっ……うるさいわね! 悪かったわね、喋れなくて。アナタだって喋れないでしょ?」
「私はまだ中学生ですし~」
あの二人はほっとこう。四季は、英語が喋れそうな要に声をかけた。
「か……要君、英語喋れる?」
要は突然声をかけられ「えっ」と小さく驚きの声をあげる。
「ま、まぁ、喋れる事は喋れるよ」
「じゃあ、通訳してください!」
四季は顔の前で合掌する。要は「わかったよ」と言って金髪の少女の目の前まで歩んだ。「何て言えばいいの?」と聞いてくる要に四季は言った。
「えっと……まず『日本語わかりますか』、的な?」
そう言うと、要は早速通訳をし始めた。
「Do you know Japanese?」
(わっ、ペラペラ!)
ペラペラ、といってもこの程度の英語は中学生レベルだ。言えない四季のほうがおかしい。
急に声をかけられた金髪の少女は、その綺麗な髪を揺らして要を見た。その腰のあたりまである長い髪は、よく手入れされているのがわかる。手入れがめんどうで今までずっとショートカットだった四季にとっては羨ましい事この上なかった。
「A little. It is not almost understand.」
「少しだけ。でも殆どわからないって」
「そっかぁ~……」
(……じゃあ、要君にずっと通訳してもらわないとだな)
「うんと、『自己紹介してください』」
「Please self-introduction.」
要君の言葉に金髪の少女は「OK」と言って皆の方を向いた。
「My name is Milia Herschel. 16 years old. I'm from UK. In the UK I was called “Mil“. My hobby is listening to music. Nice to meet you.」
四季や周りにいる住人達は最後の「Nice to meet you.」の言葉はわかったので、「Nice to meet you too.」と口々に言った。後から聞いた話だが、ミリアは「私の名前はミリア=ハーシェルです。十六歳です。イギリスから来ました。むこうでは“ミル“と呼ばれていました。趣味は音楽を聞く事。よろしくお願いします」と言っていたそうだ。
「ミリア=ハーシェルさん。むこうでは“ミル“って呼ばれてたんだって」
「へぇ~……」
(ミリア=ハーシェルさん……ミル、か。同い年かなぁ? 今度洋楽の話でもしてみようかな)
これでミリアの自己紹介は終わり。四季は要にこっそり「ありがとう」と告げ、次にいくよう言った。
次は、先程から女性との言い合いが絶えなかった黒髪の少女だ。
「小宮蘭です! 春風中二年です! 好きなものは二次元です! 皆さん、知ってますか!? ○○ってアニメの××ってキャラを! とっても格好いいんですよ! それと、△△ってアニメの□□ってキャラも――……」
「あー、はいはい。もう結構です」
まだまだこれか話がヒートアップしそうだったので、四季は蘭を止めた。だが、蘭はまだ止まらない。皆も嫌そうなうんざりしたような顔をしているので、次にいくよう言った。
次は、話がまだ止まっていない少女の言い合いの相手の女性だ。
「朝倉千寿。二十四歳。今年証券会社に就職したばかり。特技は裁縫。よろしくね」
「ガキ共」と言いたげなその目に気づいているのは四季だけじゃないだろう。すると、いつの間にかアニメの話が終わっていた蘭が千寿を見て嘲笑った。
「えっ……アナタ、まだ二十四だったんですかぁ?」
それを言っちゃダメだ!! と、蘭と千寿以外の外野全員が思った。当の本人は、ワナワナと怒りがおさまらない様子。それもそうだろう。外野が千寿の様子に怯えていると、千寿は蘭のもとへズカズカと歩いていった。
(……あぁ、あれは絶対怒られるパティーンだな)
千寿は蘭の前に立つと、すうっと大きく息を吸った。要は何かを察した様子で、両手で耳を塞いだ。
「この、小娘がぁ! あぁ、そうだよ。二十四だよ。何か悪いかぁ! アンタより十歳も歳上にそんな口叩くんじゃないよっ!」
「……」
案の定、千寿はすごい剣幕で怒鳴り散らした。蘭はというと、千寿の迫力に目を見開いている。「このこのっ」と千寿は少し楽しそうに蘭の両頬をつねる。蘭は「いひゃいれふっ」と声をあげる。蘭には可哀想だが、あの二人はほっとく事にした。




