#37
蘭と千寿の間に火花が散ったまま、夏休みは終わり九月へ突入した。自然に解決してくれると考えていた四季は、未だに解決しない事を疑問に思っていた。
(何でだろう……。そんなに根に持つ事かなぁ?)
うーん、といかにも考え事をしてる人の様なポーズをとる。そんな四季は、ガシャーンという何かが割れる音に肩を思いっきり震わせた。その直後、誰かが何かを叫んだ。その声が千寿のものだと認識した瞬間、四季は音がした方へ駆けた。
キッチンと、その周りに立つ千寿、蘭、玲央、そして心也。どうしたんですか、と足を一歩踏み出した瞬間、隣にいた心也に強く腕を引かれた。
「気をつけろ」
そう言って、足下を見る心也を追って、四季も視線を落とした。そこには、皿が割れた欠片が散らばっていた。
「……あ、ありがと」
四季がお礼を言うと、心也は聞こえないフリをしているかの様に、視線を逸らした。彼なりの照れ隠しなのだろう。
そんな、和やかな空気はすぐに去っていき、千寿の罵声が再び響いた。
「アンタ、何してるのよ!」
指さす先には、少々困った顔の玲央が。千寿は、眉間に皺を寄せたまま続けた。
「何枚割れば気が済むの? このお皿、誰のお金で買ったと思ってるのよ!」
「……お、俺だってわざとやった訳じゃ……」
「わざとかどうかなんて、今は聞いてないわよ!」
どうやら、今週夕食調理係の玲央がお皿を割ってしまったらしい。しかも、千寿の話によると、これが初めてではないという。何度か割ってしまっているらしいのだ。
(そりゃあ、怒りたい気持ちもわかるけど……いくらなんでも怒りすぎじゃない?)
怒りを爆発させる千寿を、四季は怪訝そうに見ていた。すると、とうとう我慢できなくなったのか、心也が嫌そうに口を開いた。
「うるせぇんだよ、ババア」
(……な、なに言ってんの、心也!!)
バカぁ! と、四季が心の中で叫ぶのと同時に、千寿も叫ぶ。
「バ、ババアですって!? まだ二十五なんだけど!!」
「そうだよ。心也、謝って!」
そう言っても、心也は顔を背ける。それどころか、調子に乗りだし、黒い笑みを浮かべた。
「いい歳して、大声出してんじゃねぇよ、ババア」
「そうですよ。前々から思ってましたけど、蘭のほうが精神年齢上なんじゃないですかぁ? オバサン」
同じく調子に乗った蘭も、千寿を罵る。さすがにこれは言いすぎだと、四季は思った。二人を止めようとした時、千寿が思いがけない事を口走った。
「……いいわよ。そんなに言うなら、アタシ、ここを出るわ!」




