#35
八月。暑すぎて外に出る事を諦めた四季は、トランプ片手に蘭と向き合っていた。目の前の物を凝視し、慎重に一枚一枚積み上げていく。あと一枚――というところで、ガタガタッ、という揺れによりそれは無惨に倒れた。
「「あーーーーーーーーっ!」」
四季と蘭の絶叫が響きわたる。倒れたトランプタワーの欠片を見て、二人は脱力した。
「努力の結晶がぁ……」
嘆く四季。蘭はそんな四季に共感しつつも、疑問を抱いていた。
「……四季先輩、さっきの揺れ、なんかおかしくなかったですか?」
「え? 確かにそういえば……」
とても地震とは言い難いような、一瞬の揺れ。何だったのだろうか。
「今、蘭達以外に誰がいますか?」
「えっとー……、康太さん?」
その名が出た瞬間、二人はハッとなり、顔を見合わせた。互いの考えを確認する事なく、二人は二階へ足を運んだ。
康太の部屋、202号室の前で二人は足を止める。なんだか、嫌な臭いがする。何かが焦げたような、そんな臭い。二人は眉をしかめた。気づかなかったフリをしてしまおうか、そう考えていた時。康太の部屋のドアが、ゆっくりと開いた。
「……康太さん、何ですかその格好」
思わず、そう溢してしまった四季。康太の格好は、何故か、所々薄汚れている白衣を羽織っていた。
「……ドカーン、とね」
康太は、無表情のまま答える。隙間から見える康太の部屋の中は、白衣のように薄汚れていて、天井や壁には穴があき、中央には謎の実験装置らしき物が置かれていた。四季は、汚いものを見るような目でそれを凝視した。
「実験か何かしてたんですか?」
「うん。好きだからね」
「そうなんですか~」と、蘭は相槌を打つ。平然としている蘭をよそに、四季は康太に問うた。
「この実験装置は?」
「作った」
「実験失敗したんですね?」
「うん」
「天井と壁、穴あいちゃったんですけど!?」
「そうだね」
だから何? 風に答え続ける康太。四季の「『そうだね』じゃないわー!!」という叫び声が、ひなぎく荘内に谺した。
穴があいた天井と壁は、翌日業者が修理に来た。だが、康太は反省の意を示さず、その後も理科実験を続けたとさ。




