#34
「今日の夕食はー……、鰻でーす!」
奮発しました! と言わんばかりの顔で、夕食調理係の四季は、料理を出した。
「何せ、今日は『土用の丑の日』だからね!」
「土曜日じゃないのに、鰻食べるんすか~?」
玲央のおバカな質問に、四季はガックリと肩を落とす。はぁ~、とため息をついていると、要が玲央に説明してくれた。
「土曜日じゃないのに鰻を食べるのは、暑い夏を乗りきる為なんだ。有名なのは、平賀源内が発案したって説だよね。鰻屋に、『"本日丑の日"っていう貼り紙を貼れ』って言ったってやつ」
「そうそう、それそれ」と、四季は何度も首を縦に振る。要が言った事全てを知っていたかは不明だが。まぁ、玲央が納得したからよしとしよう。
そんなこんなで、住人達は今年は一度しかない土用の丑の日の鰻を堪能した。食べ終えるのが早い菜乃花は食器を洗い始め、同じく早い心也はソファで寛いでいた。四季は、そのタイミングを見計らって、二人に聞こえない程の声のボリュームで話し始めた。
「皆さんに、話したい事があるんです」
七月最終日。今日は、とっておきのサプライズが用意してあるのだ。住人達は、菜乃花と心也が部屋から出てくるのを待つ。そして、その時が来た。二人が姿を現した瞬間、住人達は手に持っていたクラッカーの紐を勢いよく引く。
「「「「「「「「ハッピーバースデー、菜乃花アンド心也~!」」」」」」」」
口を合わせて言う。それを見て、菜乃花と心也は目を丸くした。言葉を失っている二人に、四季は駆け寄る。
「驚かしてごめんね~! もうすぐで二人の誕生日だからって、数日前から用意してたの!」
「ねっ?」と住人達の方を向くと、皆一斉に微笑んだ。
「いやぁ、二人とも誕生日が近くてよかったよ」
「……完全にめんどくさがってるだろ」
心也に図星をつかれ、四季はギクッとする。「あははは~」と笑って誤魔化した。
「そ、そんな事より! さっさとケーキの火消してよ!」
食べたいんだから! と言わんばかりの表情で、二人をケーキの前へと誘導する。二人の年齢の十六本のロウソクを、代表で菜乃花が吹き消した。その後はケーキを食べて、遊んで、会話して。ちょっぴり楽しそうにしている心也を見れて、嬉しくなった四季であった。




