#33
「ぎゃあああああああ!」
四季達の夏休みは、一人の悲鳴によって始まった。
リビングでソファに寝転がり、雑誌を読んでいた四季は反射的に体を起こす。すると、バンッ! と大きな音をたてて、部屋のドアが開け放たれた。
「ちょっと、誰ですか!」
どうやら、悲鳴の主は蘭だったらしい。どうしたのかと訊ねると、
「棚に飾ってあったフィギュアが全部倒れてるんです!」
と、嘆いた。「誰ですか、蘭の部屋に入ったのは!」と、犯人探しをし始めたその時。ダダダダ、と廊下を走り、階段を駆け下りてくる音がした。
「誰だよ、バリカンのコンセント抜いた奴!」
そう叫んだのは、智宏だった。どうやらお風呂上がりのようで、タオルを腰に巻いただけの格好だった。
智宏の登場に、蘭は眉をしかめた。
「ちょっと、智宏さん? 今、蘭のフィギュアを倒した犯人を探しているんです。邪魔しないでください」
「おいおい。そんなフィギュアより、今はバリカンのほうが大切だろう?」
「いいえ、フィギュアのほうが大切です!」
「バリカンのほうが大切だ!」
蘭と智宏は、何を言い争っているのだろうか。千寿の「くだらないわね……」という呟きに、四季と玲央は何度も頷いた。
二人の言い争いは、まだ続く。四季はタイミングを見計らって、「あのー……」と口を挟んだ。
「その辺にしませんかー?」
四季が声をかけると、二人は同時に四季に顔を向けた。
「じゃあ、四季先輩、犯人がわかるんですか?」
「えーっと、それは……」
四季は言葉を濁す。「たぶんだけど……」と四季の考えを口にした。
「フィギュアを倒した犯人は、たぶん地震じゃないかな。数分前に、小さかったけど揺れてたし。それと、バリカンは私がさっき見た時は、既にコンセントが刺さっていませんでしたよ? たぶん、刺し忘れたのかなぁと」
四季の推理を聞いて、二人は同時に「そうなんだ」と顔を緩ませた。そして、「お騒がせしました~」と同時に去っていった。
「何なの、あの二人」
千寿の呟きに、四季と玲央は再び何度も頷いた。




