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#32

 結局、四季は心也に王道のイチゴ味のかき氷を買ってきた。


(文句言っても知んないもんねっ)


 心也に、買ってきたかき氷をつき出す。受け取った心也は、四季が食べているかき氷を指さして「そっちがいい」と言ってきた。ちなみに、四季のはレモン味だ。


「はー? 無理だよ、私食べちゃってるし」


「『ブス』って言った心也が悪いんだよー」と、先程の事を思い出しながらかき氷を一口。すると、心也は「それでもいい」と言って、四季の手から無理矢理レモン味のかき氷を奪い、イチゴ味のとすり替えた。


「え……ちょっと……」

「……何だよ。何か文句あんのかよ」

「……いえ」


 躊躇いもせず、先程まで四季が食べていたかき氷を口にする心也。四季はその大胆な行動に、呆気にとられてしまった。


(……って、私イチゴ嫌なんだけど)


「ま、しょうがないか」と、四季はかき氷を口にした。

 そんなこんなで、四季達の花火大会は始まった。皆で食べたり、遊んだり。時間はあっという間に過ぎていった。

 花火大会後半であろうと関係のない四季は、お好み焼きを売っている屋台を探していた。さっきから、小腹が空いているのだ。


(何でだろう……。たこ焼きも、じゃがバタも食べたのにな)


 他の住人達のお腹は満たされるが、四季のお腹はそれだけでは満たされなかった。


「……っていうか、ないし……。皆にも探してもらおうかな――あれ?」


 振り向くと、そこに住人達の姿はなかった。周辺をキョロキョロ見回してみても、住人達のような姿は見あたらなかった。


(嘘……何で……?)


 だんだん焦りが募ってくる。もしかして、迷子になってしまったのではないだろうか。そう考えた四季の歩く速さは次第に速くなっていく。その時、慣れない下駄のせいで、四季はつまずいてしまった。


「わっ……」


 倒れる――と思った時、誰かに支えられる感覚がした。そのおかげで、体は倒れずにいる。頭上から、「大丈夫?」と優しい声がした。


「要君……」

「ビックリしたよ、急にいなくなっちゃうんだから」


 正体は、要だった。要は「でも、見つかってよかった」と微笑む。四季は、なんだか胸の辺りが熱くなったような気がした。


「あ……探してくれてありがとう。それと、いつまでも寄りかかっちゃってごめんね。重いでしょ?」


 そう言って、しっかり立とうとした時、ズキッと右足首に激痛が走った。思わず、「いたっ」と声をあげてしまう。その声に、要はすかさず反応した。


「どこが痛いの?」

「右足の、足首が……」


 そう言うと、要は四季の右足首を見た。四季の足は、真っ赤に腫れていた。


「腫れてる……たぶん、さっきつまずいた時だね」

「うん……」


 他に思いあたる節がない。という事は、やはりその時なのだろう。自分の足を見つめていると、要が物凄い事を口にした。


「背中に乗る?」

「えっ、えぇぇぇぇ!?」


 背中に乗る、つまりおんぶだ。要は、この人が多い中でおんぶをすると言っているのだ。四季の顔は、真っ赤に紅潮した。


「いっ、いやっ、大丈夫ですっ!」

「そう? じゃあ、手繋ごっか」


 そう言って、要は左手を差し出した。またもや爆弾発言。でも、要なりに気を遣ってくれているのだろう。四季が返事に困っていると、背後から「おい」と不機嫌そうな声が飛んできた。


「何してんだよ。探してたんだけど」


 その声の主は、心也だった。すると、その後ろからぞろぞろと住人達が出てきた。


「四季せんぱーい、要先輩と二人で何してたんですかー?」

「すみません、四季ちゃん探してて。そしたら四季ちゃんつまずいちゃって、足痛めてるんです」


 楽しそうに訊ねる蘭。そんなの気にせず、要は真実を語った。


「もう、何やってるのよ」


 千寿に軽く怒られ、「すみません……」と謝る四季。こんな時も、四季の心臓は何故かバクバクと脈打っていた。

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