#31
五分程遅れました!
すみません……
遂に、花火大会がやって来た。
「四季ちゃーん? 終わったー?」
菜乃花が更衣室に声をかける。中からは、「もうちょっと待ってー」と返ってきた。
ここは隣街の呉服屋。今日は花火大会という事で、張り切って浴衣を着ているのだ。ちなみに、あの後千寿に浴衣の事を話すと、あっさり了承してくれた。がしかし、「買うのだけは嫌よ」の言葉に、四季達は爆笑してしまったのだ。
「お待たせ!」
四季はカーテンを開ける。
「もう、遅いわよぉ」
「すみませんすみません。着付けに時間がかかっちゃって。あれ、すぐほどけちゃうんですもん」
「お店の人にやってもらってるのにぃ?」
あはは、と四季は苦笑いをし、やれやれ、と千寿はため息をつく。四季、菜乃花、蘭、ミリア、千寿の五人は、男性陣が待つ場所へ向かった。
「お待たせしました~!」
四季は、巾着片手に大きく手を振る。すると、男性陣の半分は、普段見慣れない浴衣姿に目を丸くした。
四季は、淡い山吹色の下地に、赤と青、二色の朝顔が大きく咲いた浴衣。菜乃花は、白の下地に、ピンクと淡い紫色の小さな花が散りばめられた浴衣。蘭は、白の下地に、水色で波紋を描く水、赤で可愛らしい金魚が描かれている浴衣。ミリアは、黒の下地に、深緑色から明るい緑まで、美しい蝶が羽ばたいている浴衣。そして千寿は、黒の下地に、紫色と白で大きな花が咲き誇る浴衣だ。男性陣はというと、地味な色の甚平だった。
「どうしますか?」
「私、かき氷食べたい!」
蘭が皆に訊ねると、真っ先に四季がそう答えた。菜乃花が「いいねぇ」と賛同する。
「大勢だと迷惑だろうし、数人で買いに行くほうがいいんじゃないかな?」
要の提案に皆賛成し、買いに行くのは四季、要、蘭、玲央、智宏の五人になった。皆、それぞれ行かない人に何がいいか聞いている。そんな中、心也だけ聞かれていなかったので、四季は心也のもとへ駆け寄った。
「心也~、かき氷何味がいい?」
ボーッと遠くを眺めている心也に問いかける。すると、心也は顔をこちらに向けたと思ったら、目を見開いて四季を見つめた。
「な……何?」
四季は違和感を感じ、心也に問う。すると、心也は「……べつに」とそっぽを向いてしまった。
「何よ~。言いたい事はハッキリ言いなよー?」
そう言うと、心也は悪戯な笑顔を浮かべた。
「いや、ブスは何着てもブスだなぁって」
そして、哀れみの笑顔を浮かべる。次の瞬間、四季はツッコミをせずにはいられなかった。
「ハッキリ言いすぎだっつーの!!」
そして、踵を返す。「もう、勝手に選んじゃうからね!」とだけ言い捨てて。
四季が立ち去った後、心也はほんのり赤くなる顔を、手の甲で覆った。




