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#29

 なんとか、数分遅れではあるが、色別対抗リレーを正式に行う事ができた。予想以上に盛り上がり、やはり探してよかったぁ、と実感する蘭であった。蘭の青組もなかなか凄かったが、玲央も凄かった。どんどん相手を抜かしていき、持ち前の運動神経の良さをよく発揮していた。ただ、


(……やっぱり、バカは体を動かす事しかできないんですね)


 ちょっと毒舌な蘭だった。ここまではよかった。問題は、その後だ。

 未だにリレーが遅れた事が気になっていた一部の生徒達が、その事実を掴んでしまったのだ。あまり公にしたくない、一時期リレーに使う道具一式がなくなるという事実。それだけでなく、蘭と玲央を発端に係の者皆で探しだす事になったという事実もだ。それを聞いて、玲央は「べつにいいじゃん! もしかしたら、俺達いい人って事で有名人になっちゃったり!? なんつってなー」と嬉しそうにした。一方、蘭はあまり浮かない顔をしていた。なんとなく恥ずかしい。いい行いをしたはずなのに、恥ずかしい。そんな気持ちでいっぱいだった。

 観客席へ戻ると、なにやら蘭のクラスの一部の人々は集まって話していた。隣にいた帆希が「皆、何してるのー?」と問う。すると、集まっていたクラスメイト達は帆希を無視して、蘭の周りに群がった。蘭は身動ぎする。クラスメイトの一人は口を開いた。


「リレーのバトンの話、『探そう』って言い出したの小宮さんってホント?」


 やはりその話か。大体予想はついていた。蘭は控えめに、質問に答えた。


「……まぁ、そうです」


(間違っちゃいませんもんね……)


 実際、玲央に話を振られ頷いただけなのだが、蘭から言い出したのと変わりはないだろう。クラスメイト達は玲央の事も知らない訳だし。

 蘭の答えを聞いたクラスメイト達の顔は、忽ち笑顔になった。


「やっぱりそうなんだ!」

「小宮さんっていい人なんだね!」

「いつも喋らないからわかんなかったよ~」


 口々に言うクラスメイト達。いつものトゲトゲした印象とは違って、穏やかで蘭は驚いた。そんな、驚き顔の蘭を見て、先程質問してきたこのクラスのリーダー格の少女は微笑んだ。


「正直、正義感強そうで取っつきにくそうだと思ってたけど、ホントは、他人の事もちゃんと考えてくれるいい人だったんだね。ホッとした」

「……蘭も、トゲトゲしい人達だと思っていたのでホッとしました。穏やかですね。安心しました」


 蘭も笑顔で返す。そして、リーダー格の少女は蘭の手を取って、「これから仲良くしようね」と笑いかけた。蘭も、満面の笑みで「はいっ」と答える。その姿を、安心したように、後ろから帆希が微笑んだ。


「……そういえば、蘭、正義感強いかもですよ?」

「大丈夫大丈夫! 話しやすそうだし。そんな事よりさ、何で敬語なの?」

「これは……何ていうか、慣れちゃったんです」

「ほぇ~」


 クラス替えをして、早三ヶ月。蘭は、漸く一部のクラスメイト達と仲良くなれたのだった。


「蘭、嬉しそうだね」


 帆希に、背後からそう声をかけられる。蘭は、元気よく「はい!」と返した。


「そういえば、あの彼は?」

「『彼』って、もしかして玲央君の事ですか?」

「へぇ、彼、玲央君っていうんだぁ。なかなかイケてるよねぇ。足速いし」

「足速いですけど、かなりバカですよ?」

「あ、そうなの?」

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