#02
派手に転倒した事で、四季の頭の中は恥ずかしさでいっぱいだった。転び方がダサかった事、出した声が女子らしくない事。全てが恥ずかしかった。
だが、そんな恥ずかしさは一瞬で『どうして転んだのか』という疑問にすり変わった。でも、四季にはそんな事いちいち考えなくてもわかっていた。
(さっき……明らかに誰かの足にあたった……この辺に座ってた人が犯人……って事は!)
「ちょっと、キミ! なに足出してくれてんの!」
四季は、犯人と思われる同い年くらいの男子に向かって指をさした。ソファにドカッと座り、足を前にほうり出してる、偉そうにしている男子に向かって。当の本人はというと、四季の言葉にフッと笑ってバカにするように言い返した。
「なに急に。ってゆーか、なに派手に転んでんの? ダッサ。やっぱバカだな」
「はぁ!?」
(『ダサい』=『バカ』なの!? 意味わかんない! ってゆーか、「やっぱ」ってなによ、「やっぱ」って! 確信したように……)
四季はここで気づいた。さっき女性と少女が言い合いをした時、四季が止めようとしにいった時に聞こえたあの「バカ……」はもしかして――?
って、今はそんな事を考えている場合ではない。羞恥心を味わわされたこいつに天罰をくださらなければ――……
(……って、そんな事してる場合じゃないでしょ。今は自己紹介しなきゃ)
四季は怒りをなんとか抑え込み、泉が立っていた場所にノロノロと立ち口を開いた。
「えー、この度無理矢理こんな大役をやらされる羽目になった五島四季でーす……」
四季がそう言うと、女性が「暗っ。少なっ」と呟く。その呟きは四季の耳にハッキリと聞こえた。
(暗いって……テンションあげられるかっつーの! ……でも、確かにこれだけじゃアレだよね。ってゆーか、この際、皆にも自己紹介してもらっちゃえばいいんじゃ……?)
「……えっと、私が自己紹介した後、皆にも自己紹介してもらいます! これから一緒に生活するわけだし、いろいろ知っておいたほうがいいかなって」
どうせまたアノ女性に反論されるだろうと思い、四季は先に理由を述べた。先手必勝。四季は心の中でガッツポーズした。すると、少女が手を挙げた。
「あの。自己紹介って具体的に何を言えばいいですか?」
「うーん、そうだなぁ……。年齢はわかるようにしてほしいかな……。あと、職業とか、趣味・特技とか?」
なかなか思いつかなかったので、四季は適当な事を言っておいた。まぁ、自己紹介といえばその辺が無難だろう。
四季は「じゃあまず、私から」と自己紹介をやり直した。こうして本格的な自己紹介が始まった。
「五島四季、県立黄咲高校一年。趣味は、うーん……運動する事、かな?」
四季の自己紹介に、さっきから突っかかってくる男子が「バカだから、頭を使わない運動なのか。バカだからな」とまた四季をバカにする。四季は殴りたい気持ちでいっぱいだったが、「次! 左から!」とほっとく事にした。
四季の次は、先程ちょろっと話した、ずっと女子と話している男子だ。
「碧波要、県立黄咲高校一年です」
(同じだ!)
「趣味は、読書です」
(確かに!)
要は淡々と自己紹介を終えた。すると、隣にいた女子がゆっくりと口を開いた。
「……えっと、松田菜乃花、県立黄咲高校一年です。趣味は……お花の本を読んだり集めたりする事かな……」
(可愛い趣味だなぁ。それに、また同じ学校の子だ!)
菜乃花の自己紹介に、女性は「可愛い趣味ね」と口にした。菜乃花は、恥ずかしそうに俯いた。




