#25
「……あれっ? あれって――……」
蘭はある一点を凝視する。そして、頭の中で何かが一致すると、その名を声に出していた。
「……――玲央君、ですよね?」
80%、いや、100%の確率でそうだ。あのはしゃぎようは、まさしく玲央だ。
「なになに? 何かいた?」
興味津々に聞いてくる帆希。蘭は、玲央を指で示しながら「あの人、知り合いです」と説明した。
「へー、蘭に男の子の知り合い……。珍しい事もあるんだねぇ」
「……そうですかね?」
そりゃあ、毎日顔を合わせるんだから、嫌でも喋って、知り合いになってしまうだろう。決して、帆希にも誰にも言えないけれど。
「ねぇねぇ、話しかけてよ!」
「えっ?」
目を輝かせて言う帆希に逆らえなくて、蘭は仕方なく玲央に声をかける。すると、玲央は気づいてくれた。
「あれっ、蘭じゃん! そっか、蘭って春風だったのか~」
あはは、と玲央は笑う。すると、玲央と一緒に話していた二人が玲央に訊ねた。
「玲央、誰だよこの人?」
「もしかして、カノジョか?」
冷やかすように笑う二人。そんな二人に玲央は反論した。
「ばっ……ちげーよ! 俺達は、シェア――」
「ちょっ、玲央君!」
蘭は、玲央の足を思いっきり踏む。すると、玲央は「いてぇ!」と悲鳴をあげた。蘭はそんな事お構い無しに、玲央に耳打ちする。
「蘭達がシェアハウスに一緒に住んでいる事、伏せましょう? 誤解されたら嫌なので」
玲央は何度も首を縦に振った。そして、二人に向き直り、
「えーっと……まぁ蘭は、偶然知り合った友達だな。うんうん」
「えっ? じゃあさっきの、『シェア』何とかって何だよ」
ギクッ、と肩を振るわせる蘭と玲央。ここは、蘭がフォローした。
「えぇっと……ほら、近くの図書館にあるシェアルームですよ。そうそう、シェアルーム! そこで、蘭達は知り合ったんです」
勿論、これも嘘な訳で。実際、近くの図書館にシェアルームなどというものは存在しない。蘭のように図書館通いの人だとバレてしまうが、幸い、二人と帆希は一度も図書館に足を運んだ事がなかった。
「へぇ~、玲央って図書館行くんだな。意外」
「ま、まぁな!」
どうやら、玲央もなかったらしい。
「ということで、俺と蘭はただの友達! わかったな?」
二人は頷いた。取り敢えず、誤解されずにすんだらしい。集合の合図が各校でかかったので、それぞれ観客席へ戻る事にした。
「なぁんだ、カレシじゃなかったんだ。残念」
「最初に『知り合い』って言ったじゃないですか」
帆希はつまらなそうに伸びをした。




