#24
春風中学校は本日、体育祭なのである。
たくさんの春風中生が集まる中、蘭はある一人を待っていた。
(……帆希ちゃん、遅いですねぇ)
人が集まってできるガヤガヤという騒音に耳を塞ぎながら、蘭は小さくなる。
暫くすると、「ら~ん!」という元気な声が耳に入ってきた。どうやら、やっと来たようだ。
「蘭! 遅くなってごめんね!」
息をゼェゼェさせながら、手を合掌しにこやかに謝罪する。蘭は呆れた様子を見せた。
「遅刻ですよ。どうしたんですか?」
「いやぁ、寝坊しちゃって」
「またですかぁ?」
あはは、と笑う少女の名前は高城帆希。遅刻の常習犯であり、蘭の唯一の友達だ。
『唯一』というのは嘘ではない。実は、蘭はこう見えて友達が非常に少ないのだ。蘭の正義感の強さが差を生み、次第に友達は離れていった。女子は蘭を避け、男子は蘭にとって論外。全員が避けている訳ではないが、自分から話しかけようともせず、友達と呼べる友達は帆希のみになってしまったのだ。珍しく蘭を受け入れてくれた帆希は、蘭にとって大切な存在であった。
「……そういえば、今年の合併校ってどこだっけ?」
蘭と帆希が通っている春風中学校は人数が少なく、この一校では体育祭を開催するのは難しいのが現状だ。また、近くの地域に同じ現状にいる中学校も多く、そのような中学校が一緒に体育祭を行う事になっているのだ。ひとつの学校で二組作り、二校で対戦するので合計四組で戦う。また、対戦する二校は毎年ランダムで決め、会場はくじで選ぶのが決まりだ。その相手校を、生徒の間では合併校と呼んでいる。去年の春風中学校の合併校は吹雪中学校だった。
「今年は――静風中ですね」
「どこそこ」
(……あれ? なんか、聞いた事あるよーなないよーな……)
全くピンとこない帆希と、何かが引っ掛かる蘭。ふあぁ、と大きな欠伸をする隣で蘭は頭を捻った。だが、結局解決しなかった。
(……まぁ、そのうちわかるでしょう)
蘭と帆希は開会式が始まるので、列に並んだ。今年は春風中学校が会場だ。いつも並んでいる隣に静風中生がいる事に違和感を感じながら、開会式をやり過ごした。
(……にしても、あの体育着見た事ありますね)
やはり何かが引っ掛かる。体育着を見たというのなら、下校時にすれちがったのだろうか。いや、それはない。何故なら、蘭が部活に所属していないからだ。では、いつなのだろうか。
疑問を抱きながら観客席へ戻ろうとした時、
「……あれっ?」




