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#22

 次の日は、「さすが六月!」と言える程雨が酷かった。


「でさぁ、昨日の心也がすっごいウザくってー――……」


 雨音がひなぎく荘内にも響く中、四季は菜乃花に愚痴を言っていた。


「……――で、思わず睨んだら、『何だよ、ブス』ってカッコつけてくんの! ブスって酷くない、ブスって!!」


「もう、超ムカつく!」と熱心に語る四季の傍で、菜乃花は「そ、そうだね……」と若干戸惑っていたその時。

 玄関のドアが荒々しく開く音と共に、心也と昨日の四人の友人達が再び入ってきた。


(わー……。噂をするとなんとやらってね……)


 ははは、と苦笑いをし、四季は心也の後ろに立つ四人の頭からつま先までを見た。

 ――皆、ガラが悪そうな顔つきだ。制服だって、一般の着崩し以上に着崩している。やはり、本当に山吹学園の生徒なのかと疑いたくなってしまう。


「また来ましたね……」


 隣で蘭が呟く。そんな蘭に、菜乃花は「あの人達が例の?」と訊ね、蘭は「そうですよ。悪そうな人達ですよねぇ」と返す。四季は、二人に「部屋に戻ってて」と指示した。

 ソファに座る心也と心也の友人達、そして四季。この微妙な空間が嫌だったが、ほっとくと何をしでかすかわからない、と思った四季はここに残る事にしたのだ。

 チラッと横目で心也達を見る。何をしているのだろうか。皆、お互いにスマートフォンを見せ合い、笑っている。どうせ、高校一年生の男子が騒いでいるものだ。ろくな話題じゃない。バカみたい、とため息をついた時、四季は見てしまった。


「おい、ブス」


 心也の声で、ハッとなる。睨んでくる心也を見て、再び「ブス」と言われた事実に気がついた。


「なっ……! だーかーらー、ブスじゃないってば!」


 ズカズカと心也の目の前まで進む。心也を仁王立ちで見下ろす四季。すると、何を思ったのか、心也は勢いよく四季の制服のネクタイを引っ張り――……


「……おい、茶出せよ」


 顔と顔スレスレのところで、心也は四季に言う。その後、心也は「あとタオルも。俺達濡れてんの」と付け足した。


「……え? あ、はい」


 四季は、素直にキッチンへ向かった。

 四季は、あの時見てしまった。スマートフォンを見て笑っている友人達の中に、全く楽しくしてなさそうな心也を。本当はあの友人達といて、楽しくないのではないだろうか。無理をしているのではないだろうか。そう思ってしまった四季は、素直に返事をしてしまったのだ。


「……どーぞ」


 少し温かい、つまり温いウーロン茶が入った五つのマグカップを、お盆に乗せ心也達のいる所まで運ぶ。そして、タオルを取りに行こうとした時、心也が一言。


「温い」


(……。そうだよ、温くしたんだよ。雨に濡れて寒いと思って、温かくはできなかったけど温くしたんだよ!!)


「温くて悪いかぁ!!」


 その言葉と共に、五枚のタオルを投げつける。

 気遣ったのが間違いだった。心也はああいう人間なんだ。ああ見えて、実は楽しいと思っているんだ。


(……たぶん)

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