#20
「終わった……」
六月。ヒナギクの花も散り、梅雨の時期を迎えた頃。四季はひなぎく荘のリビングで一人、肩を落としていた。
そこへ、不思議そうに蘭と玲央がやって来た。
「四季先輩、どうしたんすか?」
「終わったんだよ……」
若干質問の答えになっていない四季の言葉に、玲央は首をかしげる。その隣で、蘭は床に無造作に置いてある五枚の紙を拾った。その途端、蘭の顔が歪む。玲央はそんな事気にもせず、「あぁ!」と手を打った。
「テストっすか? 確かに終わったっすよね! 二週間前に」
「玲央君、そうじゃないと思いますよ……」
「ほら」と蘭は、玲央に手にしていた五枚の紙を見せる。それを見た瞬間、玲央は「うわっ!」と声をあげた。
「四季先輩、なんすかこれっ。チョーヤバイじゃないっすかぁ!」
「だから言ってんじゃん!!」
ゲラゲラと笑う玲央。それに四季は思いっきりツッコミを入れ、蘭は「失礼ですよ、玲央君……」と呟いた。
「それに、玲央君も人の事言えないんじゃないですか? 四季先輩と殆ど変わらないのに」
「はっ! 何で知ってんだよ!?」
「あそこに、適当に置いとくのが悪いんじゃないですか~?」
蘭は悪戯な笑顔を浮かべながらテーブルの上を指し示す。玲央は絶叫した。
「……玲央君って、バカなんですね。……あれっ?」
気づくと、蘭の手から四季のテスト用紙が一枚も残らず消えていた。すると、隣でう~ん、と唸る声が聞こえてくる。そこには、テスト用紙を手にした要が。
「う~ん、確かにヤバイね」
「はっ!! 何で要君まで見てるの!? 超恥ずかしい……」
要に見られるのは予想外だった四季は、手で顔を覆い更に小さくなる。
(結局わからない所は要君に教えてもらったし、自分的には頑張ったと思うんだけどなぁ……)
そう。テスト勉強でわからない事だらけだった四季は、千寿の一件もあり、全く勉強できていなかった。『いい点を取る』と目標を掲げていた四季は、このままではマズイと思い、結局要に教わる事にしたのだった。
「……でも、僕が教えた所はできてるじゃん。凄いよ」
そう言って、四季の頭を撫でる要。四季は褒められた喜びと、頭を撫でられた恥ずかしさで顔が熱くなった。
「期末もまた教えてあげるから」
「マジすか! あざーす!」
明らかにわかりやすすぎる四季。その姿を見て、要は苦笑いをした。そんな要に、蘭は訊ねた。
「ちなみに、要先輩はどうだったんですか?」
「ん? 僕は、社会がもうちょっとよかったら、480超えてたかな」
「はぁっ!? 頭良すぎでしょ!!」
要の言葉に、蘭ではなく四季が反応した。要は、そんな事ないよと照れくさそうに頭を掻く。その時。
なんだか騒がしい声と共に、見慣れない数人の男組が入ってきた。




