#19
結局なかなかいい案は浮かばず、下校の時間に。
ひなぎく荘に着き、重々しくそのドアを開くと、なんだかいい香りが四季の鼻を擽らせた。
(この匂いは……カレー?)
夕飯を作っているにしてはやや早めだ。疑問を抱きながら中へと足を進める。すると、既に中にいた蘭が「あっ、四季先輩、おかえりなさいですっ」と声をかけた。どうやら、問題のキッチンを覗いていたようだ。
四季は、蘭の言葉に返事もせず、そのままキッチンへと歩を進めた。そこに立っている人を見た四季は、蘭の声さえ聞こえなかったのだ。
「千寿さん……」
四季はポツリとそこに立つ彼女の名を口にする。すると、料理をしていた千寿が、四季を見て言い放った。
「なに、変な物を見る目で見てんのよ。なんか悪い?」
べつに、変な物を見る目で見ていたつもりはない。だが四季は、そこにつっこまず、
「いや……急にどうしたんだろうって思いまして……」
「やっぱり、変だって思ってるんじゃない」
「いや、あの……」
本当にそう思っている訳ではない四季は、千寿にそう言われしどろもどろする。すると千寿は、少し間をあけ、落ち着いた声色で、
「……アタシも、悪かったって思ってるのよ」
「……え?」
急な謝罪に、四季だけでなく蘭までも目を丸くする。でも、千寿はそんな事気にもせず続けた。
「昨日は言いすぎたわ。特にミリアには。だから、今日はちゃんとやろうと思って早めに……これじゃダメかしら?」
「……後で、ミルにも謝ってくださいね」
四季が微笑むと、千寿も「ええ、勿論よ」と微笑んだ。
「千寿さんも、意外と大人っぽいとこあるんですね」
「小娘は黙ってていいのよ」
「蘭だけそういう扱いですか!? 酷いですよぉ~」
四季先輩~と四季にくっつく蘭。ひなぎく荘は、笑いに包まれた。
(……これで、解決って事でいいのかな)
まぁいっか、と四季は深く考える事を止めた。だって、笑えているんだから。




