#17
「後遺症的な」で、許されると思っているのだろうか。
(……というか、千寿さん『後遺症』の使い方間違ってない?)
本来『後遺症』とは、ある病気・怪我等が治っても、その後まで影響が残る症状の事だ。つまり、千寿のように一度も治ってない人に『後遺症』は発症しないのだ。
(……って、そうじゃなくて)
「たとえ後遺症が残っていても、係は係です! どんなにつらくてもやってください!」
四季が訴えると、千寿は何かが気に入らない様子で眉をピクッとさせた。そして、真剣な眼差しの四季に、「あのねぇ~……」と呆れたように、
「アタシはね、アンタらと違って仕事してきてんの。家族でもないアンタらの為にお金稼いできてやってんの。それなのに、そんなふうに言っていいわけ? 少しくらい休ませてくれてもいいじゃないの!」
バンッ、とテーブルを叩く千寿。それに、四季達五人は肩を震わせた。四季は、何故だか苛立ちを抑えられなかった。千寿の言っている事も一理ある。だが、約束事を守らない事に対しての怒りが膨らんでいってしまった。
(あぁ、もうムカつく!)
怒りをぶつけてしまおうと思い、口を開きかけた時。四季よりも早く、「何ですか、それっ!」という声が飛んできた。声の聞こえた方向を見ると、そこには顔を赤くして怒りを抑えきれていない蘭が。
「何なんですか、その『自分は頑張ってるんだからいいじゃない』みたいな考えは! いいわけないじゃないですか! 係の件は、四季先輩が夜中まで蘭達の為に考えてくれたんですよ!? それを無視して……。それに、まずアナタはそんな事言える立場じゃないんです! 先月、ミル先輩が言葉がわからなくて大変だった時、アナタはミル先輩にちゃんとやれって言ってたじゃないですか! 人の事言えませんよ!」
蘭が長々と正論を述べたものの、千寿は一切怯まなかった。どちらかというと、怒りが増した様子だった。
「小娘が偉そうに大口叩いてるんじゃないわよっ! あぁ、もうムカついた。いいわ。アンタ達がどれだけ言おうと、アタシは絶対やらないから!」
千寿は、大声でそう宣言した。
(なにこの人、子供みたい……)
四季が千寿に向かって口を開きかけた時、「……もういいです」とまた蘭によって遮られた。
「いいですよ、やらなければいいじゃないですか。引っ込んでてください。蘭がやりますから」
そう言って、ズカズカとキッチンへ向かう蘭。その後を、「あっ、私も手伝うよ」と言って菜乃花がついていった。
「……そうよ。最初っからそう言ってればよかったのよ」
千寿はそう言い捨て、偉そうに自室へと歩を進めた。残された四季は、ペタリと床に座りこんだ。
(なにが「最高の一年にしてやる」よ。全然ダメじゃん……っ)
四季は、その場で悔しそうに俯いた。
(……お先真っ暗だ)




