#14
『五月』というものは、なんともやる気が出ないものだ。特にゴールデンウィークが明けたこの頃は。
「私達、まさに『五月病』に感染してますねー……」
四季の言葉に、あちこちから「ホントだね」等の声が溢れる。
「……そういえば、心也は~?」
「友達ん家に遊びに行ってるっぽいっす~……」
「康太さんは~?」
「部屋で何かしてるみたいですよ~……」
「要君は~?」
「買い物に行ったわよ~……」
元気な子もいるんだねぇ、と四季はオバサンな感想を述べる。間延びした会話が続く中、この中で唯一五月病に未感染のミリアが、同じく未感染の菜乃花に訊ねた。
「皆、ダイジョウブ?」
「うーん、どうだろう……」
大丈夫とは言いがたい現状に、菜乃花は口を濁した。
そんな中、四季はソファーの上で寝転び、唸っていた。
「あーもー無理、やる気出ない。眠い。疲れた。明日までに宿題終わる訳ないだろぉぉぉぉぉ!」
「四季先輩うるさいっす!」「四季先輩うるさいです!」
玲央と蘭に同時に怒られ、四季は「すみません……」と小さくなる。
「あぁ、もう昼間っから酒呑んじゃうかな……」
「まぁ、智宏サンもう呑んじゃうの~?」
「じゃあ、私も」と言いそうな勢いで、千寿と智宏は冷蔵庫へと向かう。が、酒がきれている事に気づき、呑むのは諦めた二人だった。
「菜乃花、何デ皆一気ニ病気ニナルノ?」
「あぁ、それはね。『五月病』って言っても本当の病気じゃなくて、新しい環境に適応できなくて発症する精神病に感染しているからなの」
「……?」
ミリアは、言葉が難しすぎて理解できず、首をかしげた。
「うーん……英語だと……『psychosis』かな?」
「Oh! "Psychosis"!」
菜乃花も最近、四季に負けじと英語を勉強するようになった。それを活かす日が、今来た。やはり進む力と勉強量は四季より菜乃花のほうが上回っている。
「あ~でも、この五月病、いつ治るのかしらね~」
「ゴールデンウィーク一週間後には治ってるんじゃないですか~……」
「そうねぇ~、そうかもねぇ~……」
またもや間延びした会話が続く。ただ、この「ゴールデンウィーク一週間後には治る」という考えが大間違いだということを、住人達は知る由もない――……




