#13
「皆さん、お待たせしました。これが新しい係表です!」
四季は夕食の時間、新しくなった係表を掲げた。何が新しくなったのかというと――……
「下に、英語が書いてありますね!」
蘭の言葉に、四季は力強く頷く。
そう。新しくなったのは、文の下に英文を付け加えたのだ。皆感心したように、新しくなった係表を見る。そんな中、ミリアも四季が持っている表を見ていた。
四季は、ミリアのもとへ歩み寄る。そして、ゆっくりと口を開いた。
「Mil, can this read? (ミル、これが読める?)」
四季の言葉を聞いて、住人達だけでなく、ミリアも驚く。皆して、目を丸くした。だって、今まで要に通訳を頼んでいた四季が、英語を喋ってしまったのだ。そりゃあ、驚くだろう。
ミリアは驚きつつ、返答をした。
「Oh, yes. I can read.」
(やった! 読めるって!)
真面目に英文を書くのは初めてで、且つ前に心也に字が汚いと指摘されたから、少し不安だった。心の中でガッツポーズをし、四季は、係表を見せながらミリアに説明した。
「This week, Mil is bath cleaning engagement. (今週、ミルはお風呂掃除係です)」
「Really!? Oh, I'm sorry. I couldn't yesterday. (本当!? あぁ、ごめんなさい。昨日できませんでした)」
「Don't worry. Let's start from today. (心配しないで。今日から始めよう)」
そう言うと、ミリアはにっこり頷いた。
四季は、無事英語が喋れた喜びと緊張から、ため息を溢した。不安でいっぱいだった四季の心は、一瞬で晴れたのだった。
一段落して、四季は住人達の方を向き微笑んだ。
「……ということで、少しの間、係表が見れなくてすみませんでした。内容に変わりはないので、また今日からよろしくお願いします……って、皆さん、なんつー顔してるんですか」
若干引き気味な表情をする四季に、玲央は「いやいやいや、だって」と四季の近くに寄った。
「だって、あの四季先輩がっすよ!? 英語ペラペラなんすもん! 驚くっすよ! ヤバイっすよ!」
『あの』って、出会って間もなくなのに玲央はどれだけ四季を知っているのだろうか。そんな玲央に続いて、蘭も寄ってきた。
「そうですよ! 四季先輩ならめんどくさがって英語とか絶対喋らなそうですもん! もう、ジェスチャーとかで伝えちゃいそうです!」
「私はめんどくさがりじゃないよ!?」
蘭の言葉に反論するも、虚しく二人で何やら盛り上がっている玲央と蘭の耳には届いていなかった。はぁ、と先程とは違うため息をつくと、誰かに肩を叩かれた。振り向くと、そこにはミリアが。
「四季、アリガトウ」
そう言って微笑むミリア。そんなミリアが今までより一段と美しく見えた。
「ミル……日本語! ジャパニーズ!」
思いっきりミリアに抱きつく四季。ミリアが笑いながら「Painful! painful! (痛い! 痛い!)」と言っているのは、まだまだ英語勉強中の四季にはわからなかった。




