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#12

 あれから数日後。四季が頭を下げて謝罪した事もあり、千寿が今までより大人しくなったと菜乃花は感じていた。


(後から蘭ちゃんに聞いたけど、四季ちゃんって思いきった事するよね)


 べつに非難している訳ではない。ただ純粋に凄いなぁと菜乃花は思っているのだ。

 そんな事を思いながら、お風呂後のココアを一口。菜乃花の中では、お風呂後にココアを飲むのは日常茶飯事なのだ。


「……よし。そろそろ寝よっと」


 菜乃花はひなぎく荘の住人の中で、いつも一番自分の部屋に入るのが遅い。だから、毎日リビングの電気を消すのは菜乃花の仕事。これも、ココアと同じく日常茶飯事のひとつだ。

 そんな時、菜乃花はとある部屋から光が漏れている事に気がついた。その部屋は、四季の部屋だった。


(四季ちゃん……?)


 珍しいと思い、少し開いたドアから中を覗く。すると、机にむかっている四季が見えた。


(珍しいな……)


「四季ちゃん? 入るよ~……」


 そう声をかけるが返事はない。近くに寄ると、スースーと寝息が聞こえてきた。


(寝ちゃってる……。勉強してたのかな?)


 もしそうだと珍しい、と思いながら四季が読んでいたと思われる本を手に取る。その本は、『基礎から学ぶ英語』というタイトルだった。


(英語……? ……あっ、まさか、四季ちゃん……)


 ミリアの為に勉強しているのではないか、と思うのは早かった。机に置いてあるもう一冊の本『英文法特集』で、それが確信に変わった。


(ミルちゃんの為に……。四季ちゃんは、こういうところが凄いんだよね。さすがだなぁ)


 四季の素晴らしさに、菜乃花は微笑んだ。そして、自分の部屋から持ってきた膝掛け毛布を四季にかけ、自室に戻った。




「あれ? ここにあった係の表は?」


 智宏の一言で、ここにいる住人達は一斉に振り向いた。


「あれっ、ホントだ……」

「そういえば、見当たりませんね~」

「そうなんだよ。自分が係の週か確認したかったんだけどね」


(……それって、この前四季ちゃんが取ってたよね……)


 ダイニングのテーブルにむかって何やら手を動かしている四季を、菜乃花はチラッと見る。でも、四季はまるで聞こえないかのように、反応しなかった。

 暫くすると、四季は椅子から立ち、テレビを見ていた要のもとへ歩み寄った。そして、何やら話した末、「ありがとう」と告げ、またもとの場所に戻っていった。何だったのだろうか。

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