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#11

「ちょっと! じゃあどうするのよ!」


 四季がいろいろ考えている間にも、千寿は文句を言う。四季は、それに反論する気もなくなってしまった。


(要君が帰ってくるのを待っても千寿さんが怒るだけ。だからといって、ここにいる誰かが英語喋れる訳でもないし。千寿さんにお風呂を待ってもらうのも、疲れてる千寿さんに悪いし……。どうすれば……)


 四季は、千寿の罵声が飛ぶ中の思考の結論を述べた。


「……取り敢えず、菜乃花、代わりにお風呂掃除してくれる?」

「……うんっ。すぐ洗ってくる」


 さすが菜乃花だ。こういう時は、何でも引き受けてくれる。「ありがとう」と菜乃花に告げ、四季は千寿に向き直った。そして、


「ごめんなさい」


 そう、頭を下げたのだ。千寿は、予想外の展開に目を丸くする。そんな千寿をよそに、四季は続けた。


「全部私の配慮が足りなかったんです。千寿さんは仕事で疲れてるのに、更に疲れさせてしまってごめんなさい。それに、千寿さんが全部悪い訳じゃないのに、ミルばっかり贔屓してしまって、千寿さんばっかり悪く言ってしまってごめんなさい」


 千寿だけでなく、周りにいた玲央や蘭も驚いた顔をした。四季は、未だに頭を下げている。千寿は、少し眉をしかめて「な、なによ。あらたまっちゃって」と呟いた。

 四季は続いてミリアの方を向いて、先程と同じように頭を下げた。


「ごめんなさい、ミル。伝わらない日本語で怒鳴っちゃってごめんなさい。わかりやすく伝えようとしなくてごめんなさい」


 勿論、ミリアは日本語がわからない。だから、四季の謝罪は伝わるはずがないのだ。だけど、四季は千寿にしたように心から謝った。ミリアは、首をかしげた。

 顔を上げた四季は、真っ先に係表のもとへ歩み寄った。そして、それをゆっくりと剥がした。


(……どうして思い付かなかったんだろう。英語で書かないと、ミルに伝わらないじゃん。言葉で伝えただけじゃダメなんだよ)


 係表を見つめていると、菜乃花の「お風呂できましたよ~」の声が聞こえた。背後から、千寿が菜乃花に「ありがとね、菜乃花」と言ってるのが耳に入った。


(……英語、真面目に勉強しよ)

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