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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

亡霊村

作者: ゴロフォン

完結出来て気が抜けました。取りあえず完結の興奮が覚めないうちに何も考えず書いてみました。

「おいウィル、肝の冷える話をしてやろうか」

「おいおいギル、こんな時にやめようぜ」

「こんなときだからじゃねえか」

「お前はほんと変な奴だよ」


 昔、亡霊に襲われ全滅した村があった。

 襲ったのは魔術霊だとかはたまた死騎士だとかいくつかバリエーションはあるが、冒険者が二人滞在していたにも関わらず力が及ばなかったのか結末はどの話も共通して全滅というのは変わらなかった。それだけなら良くある魔物に襲われたただの不幸な村の話に過ぎない。この話で恐ろしいのは何かって?


 この村は世界中を移動していることさ。亡霊村とよばれるそれはある日ひょっこり旅人や外に用事で出た村人なんかの前に出て、哀れな犠牲者を喰っちまうのさ。退治しようにも場所がころころ変わって特定できやしねえ、いつしか自然災害の一種として扱うようになって退治するのは諦めちまった。亡霊村は犠牲者も新たな住人に変えて、今もどこかを彷徨っているのさ。



 薬師のベイラはいつものように村からさほど離れていない場所にある森に薬草を取りに来ていた。別に腕が一流というわけでは無かったが、彼女の薬は村の軽い怪我や病気程度は治せるということで村人に頼られていたし、彼等から渡される作物で食べるのに困ったことは無かった。

 ただ若い女がいないこの辺境の村での数少ない若い女である彼女は男達から言い寄られることも多かった。渡される作物も大半は彼等からのものでそこは感謝しているが時間を問わず女としての自分を訪ねてくる彼らにうんざりして薬草を取るという名目で森に逃げ込むことは多かったのだ。今回もどちらかとうと薬草採取では無く逃避、という目的の方が強かった。


「あら?」

 それに気づいたのは森に入って1時間もした頃か。夕方までまだ時間はたっぷりあるし森の奥まで行こうか、と勝手知ったる森の中を歩みを進めていたのだ。勝手知ったる森……のはず。だが目の前に広がる光景は村で一番森を散策しているはずの彼女が一度も見た事が無いものだった。

 柵だ。彼女の目の前には柵があった。そしてさらに奥には木を切り開いたのかぽつぽつとだが木造の家が建っている。こんな所に家? いや村なんてあったかしら?

 疑問に思ったベイラだったが怪しいし、去ろうかしら、と思ったとき一番手前に見えていた家の扉が開くのが見えた。

「ん?」

 出てきたのは中年の女だった。いや、白髪が混じり始めているから初老か。柔和というわけでは無かったが気性の激しそうな顔ではなさそうだった。

「こんにちは」

 会ってしまったのだから挨拶くらいは交わさねばなるまい。まあ女の人だし、口説いてくるなんてないでしょう。そんな風に考えて挨拶したベイラに初老の女性も頭を下げてくる。

「こんにちは。この村では見ない顔ですが冒険者の方ですかね?」

「いえ、ただの薬師ですよ。この森から出てすぐのところに村がありまして、私そこに住んでいるんです。でも結構この森歩いているはずなんですけどまさかこんな所に村があるなんて」

「ほほ、動物除けの魔術をしていましてね。普段は外から人が入ってこないはずなんですけどどうやらちょっと魔術の効果が切れたようで」

「そうなんですか?」

「ええ。こんな所ですから凶暴な動物に襲われることもあるので、それを防ぐためにこの柵に動物除けの魔術をかけているんですよ」

「へぇー」

 一見それはただの木の柵にしか見えなかった魔術に明るくないベイラはそういうものなのか、と納得して少しだけ好奇心を忍ばせて質問した。

「どうしてこんな森の中に村を? 正直この森は薬草は多くても果実などの食べるものは少ないので暮らしにくいと思いますけど」

「いえいえ、きちんと食べる物はありますよ。そうだっ! お昼はまだかしら? ちょうどお昼を用意しているからご一緒しません?」

「え? でも」

「こうして会った縁ですしこう閉鎖的な村では外の方との縁は大事にしたいの。駄目かしら?」

 断りづらかった。まあ、確かにこんな場所では出会いに飢えても仕方ないだろう。男の人相手ではないし食事くらいは付き合おうかな。彼女はそう決断して笑顔で初老の女性にご馳走になります、と答えた。

「ではではどうぞ、こちらへ」


 彼女は柵を乗り越えた。


「あら、良い匂い」

「そうでしょう、保存しておいた肉が良い具合に熟成したの。シチューにしてみたわ。食べてみて下さいな」

「はい。遠慮なくいただきますね」

 美味しい、と思った。柔らかくてコクがあり、適度に脂肪のついた肉、他の野菜もおいしいけど何といっても一番は肉、だった。

「このお肉、何のお肉かしら? 凄くおいしいけど」

「ええ、若い牝の足の肉なんですよ。ひと月ほど前に取ってきたのを保存しておいたんですの。柔らかくて美味しいでしょう?」

「ええ、本当に持って帰りたいくらい」

「ふふ、考えておきますわ」

 食事は和やかに進んだ。料理は美味しいし、誘いを受けて正解だった。そう思いながら彼女は差し出された香草で取ったと思しき茶を受け取って飲む。凄く落ち着く、何だか落ち着きすぎて少し眠くなってきた

 かな。

「お肉の事。叶えてあげられるかもしれませんよ?」

「え?」

 眠気で曖昧になっていた彼女は短い疑問の声を上げるしか出来なかった。



 目が覚めたら全身を縄で縛られていた。

「え? 何? なにこれ?」

「あら、ばらす前に目を覚ましちゃったかしら」

 可哀想なことをしたわね、と言ったのは彼女がついさっきまで食事を共にしていた初老の女性だった。見渡すと先ほど食卓に行く前に通りかかった時に見かけた女性の部屋の一室、女性の他に背の高い冒険者らしき革鎧を着た二人の男の姿が見える。嵌められた、彼女はすぐに悟った。

「縄をほどいてください! お願いします!」

 ここはまずい。そういえば動物除けをして人が寄らないようにしていたと言っていたではないか。そんな人目を避けるような真似をするのは後ろ暗いことをやっている連中だと気付くべきだったのに、男じゃないからって安心してしまうなんて!

「まあまあ落ち着け。ほどいてくださいって言ってほどくような人のいい奴なら縄で縛るなんてそもそもやってないだろ?」

 くすんだ金髪の男がそういった。妙に顔が白い。

「おいおい、混乱してるんだからそんな道理を説いたって仕方ないさ。まあ運が悪かったと諦めろ、まあ自然災害みたいなもんさ、俺達は」

「良いから離して!」

 半狂乱だった。殺される、帰りたい。縄を解いて、早く家に帰して、お願い!

「おいウィル、肝の冷える話をしてやろうか」

「おいおいギル、こんな時にやめようぜ」

「こんなときだからじゃねえか」

「お前はほんと変な奴だよ」

 男は恐怖に脅えるベイラに言い聞かせるように話し始めた。


 昔、亡霊に襲われ全滅した村があった。

 襲ったのは魔術霊だとかはたまた死騎士だとかいくつかバリエーションはあるが、冒険者が二人滞在していたにも関わらず力が及ばなかったのか結末はどの話も共通して全滅というのは変わらなかった。それだけなら良くある魔物に襲われたただの不幸な村の話に過ぎない。この話で恐ろしいのは何かって?


 この村は世界中を移動していることさ。亡霊村とよばれるそれはある日ひょっこり旅人や外に用事で出た村人なんかの前に出て、哀れな犠牲者を喰っちまうのさ。退治しようにも場所がころころ変わって特定できやしねえ、いつしか自然災害の一種として扱うようになって退治するのは諦めちまった。亡霊村は犠牲者も新たな住人に変えて、今もどこかを彷徨っているのさ。


「い、いや……そ、そんなの嘘よ」

「嘘じゃないさ。俺らはとうに死んでるのさ」

「ようこそ、可愛らしい新しい住人さん」

 そして、新鮮な食材さん。


 ベイラという薬師の女が森に入ったまま帰ってこない。村の男連中は鼻息を荒くして森を隅々まで探したが彼女の姿を見つけることは無かったという。

鼻息荒くしてあわよくば王子様になろうとしていた男達ですが彼女は既に違う世界に行ってしまいました。

バッドエンドのホラーを書くと何かに憑かれそうな気がして躊躇していたのですが、それなら魔術有のファンタジー世界が舞台のホラーなら良いかも、と何が良いのか分かりませんが考え直して書いてみました。もしかしたら削除するかもしれません。

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