自覚。
仲のいい兄弟って憧れます。
「おにーちゃん、おはよう」
目を開けると海羽が目の前にいた。
30㎝近づけばおでこが触れ合う。
それでも海羽は無防備に目をこすりながらあくびをする。
長い睫、透き通るような白い肌、美しく光る黒髪、すらりと伸びる長い手足。
女の子として必要なものはほぼすべて持っている。
「…おはよう」
今までならなんてことなく流してきた海羽の一挙一動が気になる。
―――――ここまで可愛い生き物だったか、コイツ…
今はおばあちゃんがいない。
つまり家に二人で暮らしているわけだが、耐えられる自信はあった。
いやむしろこんな妹にそんな気起こすかっつーの、と思っていた。
でも。
―――――もう自信なくなってきた…
おばあちゃんがいないということで、監視してくれる人間が消えたのだ。
よく考えれば大問題である。
つーかなんで今まで気が付かなかったんだよ。
考え直すタイミングはたくさんあった。
もともと身寄りのない俺たちに行くあてはないが、それぞれ働いて家を借りるということもできたのだ。
それでも、おばあちゃんを忘れたくないということでこの家に二人で残ったのだった。
しかし、いまさら後悔しても仕方ない。
海羽が俺から奪っていたタオルケットを…
「ちょっと待て、なんでお前ここにいるんだ?」
冷静になって考えれば海羽が俺の部屋にいること自体がおかしいんだよ。
ぽけっとしている海羽を揺する。
「ぅん、おにーちゃん、起きた?」
「いや、お前が寝てたんだが」
そう言って海羽をベットから引きずりおろす。
「あぁ、ダメ!ふとんーー」
じたばたと暴れる海羽をひょいと抱え上げると暴れなくはなったが、代わりにものすごい罵倒が心に突き刺さった。
「何してくれんのよ、この変態兄貴!重いんだからっ、ちょ、どさくさに紛れてどこさわってんのっ!おろして、おろせ、今すぐおろせ!」
「うっさい、耳元で騒ぐなっ、つーか俺はどこも触ってねー、濡れ衣だ」
「触ったよっ、お嫁に行けなくなっちゃうじゃない!!」
「へー、そんな風には思えなかったけどな」
「なっ、失礼な…、あるわよ!見えないかもしれないけど、あるのよ!!」
「どこだ?俺には触った限りわからなかったけどな」
「なっ、やっぱり触ったんじゃない!このっ変態!あっち行け!」
「だから、お前のその貧相な胸なんて触ったってわかんねーんだよ」
「ふざけんなし!おにーちゃんには罪悪感ってないの?!」
海羽の細い体を落としてしまわないように慎重に運ぶ。
海羽の部屋は俺の部屋の隣で作りもほぼ同じだ。
ドアを開け中に入る。
久々の海羽の部屋はまたいっそう女の子らしくなっていた。
海羽をベットの上におろすと海羽はアメーバのようにぐでーんと横になる。
パジャマの襟から覗く鎖骨が妙に艶めかしい。
何故か頬が熱くなってきた。
耐えられなくなり視線をそらす。
「おにーちゃん」
昔のような海羽の幼い声が聞こえた。
ふいにそんな声が聞こえたので振り返ってしまった。
振り返った先には若干涙目の海羽がいた。
おばあちゃんが死んでしまってから毎晩泣いているのは隣の部屋から聞こえていたので知っていた。
しかし面と向かって泣かれるのは、これが初めてだった。
「なんでおばーちゃんは死んじゃったの?ねえ、なんで?いやだ、寂しいよ…」
泣き出した海羽を見て俺はひどく動揺していた。
どうすればいいかわからなかった。
いきなりのことだった。
ただ、目の前の大切な人を傷つけたくなくて、傷ついてほしくなくて抱きしめた。
これは兄弟でしても許される行動かはわからなかったけれども、今なら許される気さえした。
抱きしめて思った。
家族でなくとも、兄弟でなくても、海羽は俺にとって大切な人間だと。
腕の中で静かに泣いている女の子はもう、女の子でなくてひとりの女性としてしか見られなかった。
俺は海羽を好きだと、自覚してしまった。
もし許されるのなら。
もし海羽に好きな人ができなければ。
もし俺のことを好きになってくれるのならば。
俺は海羽と生きていたい。
そう思った。
なんだか話が飛んでいってますが、そのうち軌道修正します。
次からは海羽視点でいきまーす。




