おばあちゃんと、義妹誕生。
さて、やっとたのしくなってまいります。
まだ過去編的な感じですがね。
目が覚めるとそこは天井だった。
そりゃ、寝てたんだから…。
目を何度かあけたり閉じたりする。
何も変わらない。
や、変わったら困るけど。
「あらあら起きたの?」
素敵なご婦人が自分を覗き込んでいる。
きれいなほどに色素の抜けた白髪、黒く澄んだ瞳、しわはありつつも艶やかな肌。
「ぇと、あの」
言葉が出てこない。
「お腹空いてるんでしょう?今ご飯作るから待っててね」
優しく微笑んでくれる。
なぜか安心した。
「おにーちゃん、おなまえは?」
子供の幼い声が聞こえる。
しかしあたりを見回しても誰もいない。
「おっ、おなまえは?!」
どうやらドアの向こう側のようだ。
恥ずかしいのか隠れたまま姿を見せようとしてくれない。
「罹麻だよ。初瀬罹麻」
「……………」
無言。
返事してよ…。
自分より年下に無視されるって思ったよりきついなー、などと考えているとあのご婦人がやってきた。
「へぇ、罹麻くんっていうのね。ご飯、持ってきたから食べてちょうだい」
「ありがとう…ございます」
おずおずと礼を言って食事に手を付ける。
「おいしいっ…」
今までの食事はなんだったんだというほどおいしかった。
「あらまあ、私の食事をおいしいだなんて、よっぽどお腹が減ってたのね」
ご婦人は可愛らしくクスリと笑った。
今まで食べなかった分を補うように、胃に流し込むように食べた。
食べ終えて一息ついたところで質問された。
「それで罹麻くん、聞きたいんだけど、なんであそこに倒れていたの?」
それはいつか質問されると思っていたのでありのままを話した。
もちろん、売られた云々は飛ばして。
自分の売られた話なんて自分でしていていい気分じゃない。
ご婦人は話を聞き終えると手を叩いた。
「行くところがないなら家に住むといいわ!やだ、孫がもう一人増えたみたい!海羽もお兄ちゃんができてよろこぶわ。ふふっ、そうとなったらいろいろ用意しなくちゃ」
少女のように騒ぎながら部屋の外に出て行ってしまった。
「海羽ちゃんっていうの?」
まだドアの外に隠れている女の子に声をかける。
「おにーちゃんは、いくつ?」
逆質問だった。
いや、別にいいけどさ。
せめて質問には答えてほしいかもな。
「11だよ。海羽ちゃんは?」
「き、きゅう」
「9歳か、2つ違いだね」
「…………」
もう無言がつらいんですけど。
ご婦人が帰ってきました。
何やらハイテンションです。
「さ、今日から罹麻くんはうちの子だよ!」
そんなわけで、おばあちゃんと義妹ができたようです。
てなわけで、あと少し昔話続きます。
もう少ししたら、ふたり暮らしが始まります(ニヤリ)