至福の瞬間
あのあとおにーちゃんと一緒にご飯を作って食べた。
その間中髪を撫でてくれたり、抱きしめてくれたりした。
まるでストッパーが外れたみたいに……。
私は嬉しくて仕方なかった。
今まで何も大事なことを話そうとしてこなかったおにーちゃんは、やっと私にいろんなことを話してくれて、私の至らない部分までちゃんと受け止めてくれた。
おばあちゃんにもあんな緩みきった笑顔見せなかったかもしれない。
それくらい安心できる居場所を見つけられた。
やっと、見つけた。
「海羽、あのさ」
それはご飯中のことだった。
私はその真剣な表情を見て何事かと思った。
それくらい真剣だった。
「俺さあ、今まで海羽になんも話してこなかったこと今更後悔してんだけどさ。これからはおたがいはなしていかないか?そのほうがおばあちゃんも安心できるだろうし」
おばあちゃんが安心できる。
これは私に見事にクリーンヒットしたセリフだった。
「俺としてはもっと海羽のこと知りたいし、そのほうが安心できるし。いいだろ?」
よくねーよ。
くらっと来ちゃったじゃん。
私のこと知りたいって……、どんなセリフよ、それ!!
君のこと、もっと知りたいとかいうセリフって少女漫画でしか読んだことないよ?!
っていうか何で私??
「べべべべ、ッ別にいいんじゃないの?」
私はずっとちゃんと話してきてるし……。
あとからもぞもぞ喋った言葉は聞こえていないだろうが。
あぁぁぁぁ!!
もう、何で私こんなに赤面してるのよ!
「……なんでそんなにかみかみなんだ?」
面白そうに聞くおにーちゃんは私の心の内を覗いたようににやにやと笑っている。
っちっくしょー! むかつく……。
にやにやしながら私の頭を撫でる。
すごく自然な行為でまるで今までずっとしてきたようにこなれている。
……こうやって頭撫でてあげる相手とか、いたのかなぁ。
結構不安になる。
まぁ、おにーちゃんにそんなのできたら私が一番に知ってるか。
自分の中で渦巻いている感情に驚く。
こんな風に誰かに対して思―――――
「おい、き、兄弟間での不純異性交遊はダメだろ!!!!!!!」
いきなりの大声とその内容に振り向く。
そこには目を真ん丸にして呆然と立ち尽くす春崎先生がいた。
「「何で勝手に入ってきているんですか!?」」
私とおにーちゃんの声が重なる。
ちょっと距離が近くなるみたいでうれしい。
「何でって、お前らの家から知らないやつが出てきたからちょっと外から様子うかがってたんだよ。そしたら不純異性交遊が始まって……」
いや、そんなことしてないし。
兄弟では抱擁さえも禁止なんですか、じゃあメロスたちはホモですか?
春崎先生はずいぶん古い考えをお持ちのようだが、スルーさせてもらう。
そもそもやましい感情なんてこれっぽっちもな、……。
訂正します。
これっぽっちどころか湧いてでる泉のようにありました。
すみません。
でもでもでも!
「はーん、先生、そこから見ていたのにどうして今まで入ってこられなかったんですか?」
おにーちゃんはまるで余裕といった表情で春崎先生に問いかける。
「恥ずかしかったんでしょう、先生が。俺らが仲良くしているのを見るのが。どんだけ初心なんですかねぇ、せ・ん・せ・い」
あれ?
私のおにーちゃんってこんなに人を責めたり、要するにSでしたっけ?
疑問を抱えつつも私だって恥ずかしいので下を向いて黙っとく。
こっちのほうが安全だ。
さっきの続きに戻ろうか。
でも、私はおにーちゃんがおにーちゃんでいることが好き。
たとえこの気持ちが膨らんで抑えきれなくなっても、もう一つ気持ちをためておく容器を用意すればいい。
好きって言ったっておにーちゃんは今、私が傷ついてるからなぐさめてくれてるんだし。
私は割り切った気持ちで笑う。
「おにーちゃん、そんな先生は放っておいてごはんたべよ!」
さぁて、私が好きって言ったらおにーちゃんはどんな反応するのかな?
心の中でほくそえみながらおいていたスプーンを拾う。
さて、いい感じにまとまったので次は罹麻でいきます。
あれ?
今日エイプリルフールじゃないのに嘘ついてる人がここ(ry
ではまたそのうち打ち込みます!