第3話・それが彼にできること ~思った以上にすんなりと~
第2章 薄日に眠る祈りの先に
第3話・それが彼にできること ~思った以上にすんなりと~
その問い合わせというか、求めに対して、上層はペルフィーが思っていたよりも早く……いや、むしろ即座に動いてくれた。
昨日、神官呪師学校の校長、ヴィロバ=エルマーニから今後の学習スケジュールがこれまでとは比べ物にならないほどゆっくりとした、ゆとりのあるものに変わると伝えられたアインが、呪師寮に併設された小礼拝堂で泣きながら祈りをささげるのを見て。
このままだとまずいと感じた。
正直、ペルフィーは皇宮呪師のインス=ラントをよく知らない。
孤高の天才とか生意気な若造とか。色々と言われていることは知っているけれど、本人と会ったこともない。
だから、まだ十八歳という若さで第一線に立たされて任務に駆り出されたり、特例入学のアインに対して、皇宮呪師としての実技指導を担当する教官にされたりと、若いのに大変だな。程度にしか思っていなかった。
初めて明確に、インスに対して強い感情を抱いたのは、長期入院していたアインが退院後初めての授業で皇宮側に行った後。
神殿護衛官に連れ帰られたアインが疲れからか眠ったまま帰って来たのを見て。
まだ、怪我が癒えてもいない……治る気配もない怪我を抱えたままの幼い子供に、いったいどんな過酷な訓練をさせたのかと、憤りを感じた時。
その時初めて、インス=ラントという青年を強く意識した。
疲れて眠った状態で帰ってきたにもかかわらず、アインがインスにどっぷりと依存していることに気づいて、あまりの危うさに戦慄した。
本人がいなくても、彼が着ていたのだろう、ローブを抱きしめて、それで漸く安心したように眠るアインを見て……熱に浮かされても、それでもインスを求める姿に……危なすぎると思った。
なのに、アインの口から、インスに関する話は一切出てこなくて……それもまた危なっかしくて……昨日、小礼拝堂で祈りを捧げるアインを見て、漸く気づいた。
出ないのではない。出せないのだ。怖すぎて……
アインの唇が、音もなく刻んだ言葉を目にした時。
その唇が、何を紡いだのかを読み取った時。
まずいと感じた。
このままだと、アインは壊れる。間違いなく。
幼い、傷だらけの心で。
それでも周囲を気遣って、己の気持ちを押し殺して。
求められるままにすべてを受け入れ続けるアインが、限界を超えていることなんて、とっくに上層も分かっている筈なのに……!
そう思ったら、もう待ってはいられなかった。
アインと一度部屋に戻って。
夜、アインが眠るのを待ってから、当直の神官呪師に伝言を頼み、上層の誰か、一人でもいいから話をさせてくれと求めたペルフィーに対して、すぐに招集がかけられた。
まさかこれほど早く動いてくれるとは思わなくて驚いたペルフィーだったが、集まった顔ぶれを見て度肝を抜かれる。
そこには、教皇を含むすべての神殿最上層部の人員が揃っていて、一介の医呪神官見習いの求めに応じて集まったにしては錚々たる顔ぶれ過ぎた。
流石に魂を飛ばしそうになったペルフィーだったが、そんな錚々たる顔ぶれを呼び集めておいてろくに何も言えないでは申し訳なさすぎる。
忙しいのが分かり切っている面々に、こんなことを頼んでもいいものか? という迷いがなかった訳でもないのだが、それでも意を決して自分の考えを伝えた。
その結果……
「じゃ、明日、アイン君を皇宮医務殿に行かせてあげて頂戴」
ごくあっさりとそう告げた教皇・ステラ=シアスの言葉を聞いて……
これで、少しはアインの気持ちが慰められればいいけれど……と思ったペルフィーは気づくのが遅れた。
アインが行くことを許された場所が、皇宮内の神殿に所属する医務殿だということに。
それはつまり、アインが、口に出すこともできずに、心の底から会いたいと願っている相手が、不調であるという証拠で。
ペルフィーがそのことに気づいたのは、アインが神殿護衛官に連れられて出かけた後で……
アインに対しても、どこに行くことになるのかを、伝えられずに連れ出されていた事に、出かけて行った後に気づいて、漸く気づくという体たらくで……
(……まずい! 最悪、逆効果になる可能性が高い……!!)
そう思っても、後の祭り。
神殿の上層部が許可を出した、その理由が、インスの状態が悪すぎるからではないことを神に祈ることになった。
第2章第3話をお読みいただきありがとうございます。
アインの祈りを見たペルフィーが上層部へ掛け合おうと奔走しました。
見事に面会許可を勝ち取った彼の行動力は、まさに頼れる兄貴分ですね!
しかし、思いのほかすんなりと許可が下りたことで、「もしかしてインスの容態が絶望的だからでは……?」と最悪の可能性に思い至り、結局また胃を痛めるハメに……(笑)。
純粋に喜ぶことのできないこの不穏な空気感。
果たしてペルフィーの抱いた一抹の不安は、単なる取り越し苦労で終わるのか?
次回もお楽しみに!
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姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】
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【第2部はこちら】
姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第2部・レッド・フレイムの残照】
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【番外編・第1弾はこちら】
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【番外編・第4弾はこちら】
皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞④~幻影人形で選ぶ道~
(https://ncode.syosetu.com/n1705lx/)
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ノリト&ミコト




