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第1話・心の底から望むのは ~振り回されるはいつでも現場~

第2章 薄日に眠る祈りの先に



     第1話・心の底から望むのは ~振り回されるはいつでも現場~



 インスの意識が戻らない。



 連日皇宮医務殿に続く皇城からの問い合わせが、昨日から日に何度も来るようになった。



 頭を抱える医務殿の長官。医呪神官のウスニー=メンテが、誰からのものなのかを問い合わせれば、しつこいくらいに連日問い合わせて来ていた相手が、実は一人に集約される複数のルートからだと判明した。



「……何を考えているんだ、あの方は……」



 複数のルートからになったのは、その一人が求めたことを、本人だけでなく、その周囲の人間も同じように問い合わせて来ていたから。



 皇城の情報管理はどうなっているんだと、ウスニーが恨み言を漏らすが、どちらにしろすべての元凶……高貴な身分の相手にこんな言い方はあれだが、文字通り元凶……はただ一人であることが分かって、少し……本当に少しだけ安心した。



「……分かっていないのか? ご自分が何をしているのか……」



 重い溜め息と共につい愚痴ってしまうが、答えを返す者はいない。



 いや。こんな発言、誰かに聞かれるわけにはいかないから、むしろ誰かがいれば絶対に漏らしたりはしない。



 そんなウスニーの目の前には、問題の皇宮呪師、インス=ラントが今日も昏々と眠り続けていた。



 青みがかかった銀の髪も、閉ざされた瞼の下に隠れた赤みを帯びた紫の瞳も、女性的でさえある優美な風貌の陰りさえもが美しい、細身の男はどうも何かに憑かれてでもいるのか、常に厄介ごとのただなかにいる。



 そういえば、こいつの生家は神官呪師を多く輩出している家柄だったな。と思い出すが、その生家に連なる親戚連中の多くが犯罪者として労役についている筈。



 呪師は魔法を使えるので、その力を悪用したり、暴走させて制御不能になったり、あるいは逃亡しようとしない限りは罪を犯しても処刑されることはまれ。



 生かさず殺さず使い倒す。が基本の終身刑になることが多い。



 そして、インスの親戚の多くがそんな終身刑を言い渡される犯罪者になった原因もインスだった。



「……絶対呪われてるだろう、こいつ……」



 そうでなければ説明がつかないほど、生まれた時から現在進行形でろくでもない人生を歩まされている。



 そういえば、アインも同じように呪われてでもいるかのような凄惨な人生を歩まされているな。と気づいた瞬間。ゾワリと悪寒が走った。



(……待てよ……待て待て……!)



 気づいてはいけない()()に、気づきそうになっている気がして、思考を止めたいのに止まらない。



 アインの、学習スケジュールの調整が行われる旨が、昨日、ウスニーにも共有された。



 皇宮内神殿の医務殿を預かる医呪神官であるウスニーは、皇宮側でアインが授業を受ける際に関わることになる可能性が高くなってしまい、様々国家機密に当たる情報を知りたくないのに知らされていて……皇宮内神殿のすべてを総括する大神官のローレン=ハーチスと二人、こっそり愚痴を言い合ったりもした。



 元々、主神殿で結界維持を得意とする維持術神官長であったローレンは、高齢を理由に余生をなるべく静かに過ごしたいからと、ほぼ名誉職に近い皇宮内神殿の大神官に就任したはずだったのに、ここ数年……具体的には五年前の魔族による襲撃事件以降……気の休まる暇のない日々を強いられている。



 そこに来ての皇孫皇女ジャンヌによる神剣の封印解除と使い手の選定、契約。



 更には神官呪師の家柄に生まれた皇宮呪師の才を持つ稀代の天才・インスへの虐待まがいの教育の実態に、記憶喪失で見者けんじゃの才を持つアインという、インス以上の才能の塊である幼子。



 力の制御のためと言いながらハードな学習スケジュールを組んだ皇宮側の責任者と、それを跳ねのけきれなかった神殿側の責任者と、それを良しとした皇城側の責任者と……とにかく、ローレンよりも若く野心がある輩のせいでとばっちりが酷いことになっている。



 同様に巻き込まれることになってしまったウスニーも、どうにも、このままでは済まない、嫌な予感がして……



(……頼むから、これ以上面倒なことに巻き込んでくれるなよ……!!)



 いまだ眠り続けるインスを見下ろす目が睨むようになってしまったのは、ウスニーが薄情なのか、それとも事態が彼の許容量を超えているからなのか……



 忍び寄る冬の気配が、それ以上に冷たく、凶悪な何かも孕んでいそうな予感に、知らず震えが走るのを止めきることができなくて。



 そっと息を吐いたウスニーの指先が、静かに眠るインスの頬を軽く撫でて、張り付く髪の一筋を落とした。


第2章第1話をお読みいただきありがとうございます。


皇宮医務殿で一人対応に追われる医務殿長官・ウスニーの受難のエピソードです(笑)


静かに眠り続けるインスとは対照的に、外野から容赦なく浴びせられるプレッシャーと理不尽な状況。


上層部の思惑に振り回され、現場で矢面に立つ大人の疲労と無力感……。


鳴りやまない問い合わせの対応に追われ、限界を迎えつつある現場の悲哀をお届けしました!


冬の寒さ以上に不穏な気配を感じ取っている彼ですが、果たして現場に平穏は訪れるのか!?


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【第2部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第2部・レッド・フレイムの残照】

(https://ncode.syosetu.com/n5488lq/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【番外編・第2弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力ちからの残滓~

(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)


【番外編・第3弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞③~重なり合うのは悪意おもいの欠片~

(https://ncode.syosetu.com/n5078lu/)


【番外編・第4弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞④~幻影人形ビジョン・ドールで選ぶ道~

(https://ncode.syosetu.com/n1705lx/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第5弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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