第4話・告げるは結論 ~望まれていても変えられない~
第1章 移り変わるは季節か人か
第4話・告げるは結論 ~望まれていても変えられない~
思わず漏れてしまった声が、思いもかけず室内に響いてしまい、慌ててペルフィーは両手で口を押える。
「……し、失礼いたしました……」
驚いたようにヴィロバとアイン、双方から見つめられて冷や汗をかく。
頭を下げて謝罪したペルフィーに、ヴィロバは静かに頷き、アインはオロオロと二人を見比べる。
「いえ。ペルフィー神官が驚くのも無理はありません。アイン。君が、自分のことをどう思っているのかは分かりませんが、君は異常です」
医学を専攻する神官呪師としてはまだ見習いではあるものの、既に神官位を取得していることもあって、ヴィロバはペルフィーをその職位をつけて呼ぶ。
ペルフィーの不作法を一言だけで不問とし、話をすぐに本題へと戻す。
はっきり『異常』と言い切られて、息を飲んだアインは目を見開いてヴィロバを見つめた。
そこまではっきり言い切らなくても……と思ったペルフィーも、さすがにさっきの今でまた無作法な真似をするわけにもいかなくて押し黙る。
そんなペルフィーの様子に気づきつつも、ヴィロバもアインもお互いをまっすぐに見つめ合って話を続けた。
「呪師学校の最低入学年齢を知っていますか?」
「……十三歳だと伺っています……」
周知の事実であり、何度も「十三歳には見えない。」と言われ続けているアインは、ヴィロバの問いに答える。
「そう。君は、おそらく十三歳になってはいないでしょう。それも、分かりますね?」
首肯したヴィロバの確認に、アインも曖昧に、けれども否定のしようもないので素直に頷く。
「……確かに、君は自分がどこから来た何者なのかも、生まれてから何年たっているのかも、何一つ分かってはいません……けれど、間違いなく十三歳にはなっていないでしょう。仮に、とても悪い環境で育ったのだとしても、君の体格で十歳になっているということはあり得ません」
時に、本当に食べるものにも事欠いて、成長が著しく遅い子供がいるのも事実。
けれど、そういった子供が十歳を超えるまで生きられることはほぼない。
運よく生き延びたとして、ではアインほどの理解力などを持てるか? と言われれば、ありえない。と言う答えが返ってくるだろう。
「十三歳の誕生日を迎えて以降の子供たちが、入学試験を兼ねる適性検査で、その向き不向きを客観的に判別し、より成長しやすい方向性を選んで神殿か、皇宮か、どちらかの呪師学校に入ることになります」
それが本来の呪師学校への入学のプロセス。
けれど、アインはそこから逸脱している。
いくら記憶がないとはいえ、明らかに年齢が満たないこと然り。
どちらか、あるいは、より向いている方向性、ではなく、両方を学んでいること然り。
言葉も知らない状態で保護されて、二十日ほどでその基礎教育の過程など、とっくに終わらせていること然り。
「入学から、順調に進んでも二年はかかる学習範囲を、君は既に終えています」
「……ぇ……?」
ヴィロバの言葉に、アインは目を見張って言葉を失った。
言われた意味が分からない。
入学してから、二年かかる学習範囲?
この程度はできていなければ居られなくなると思って、必死に勉強していた事が、二年もかかるものだったと言われても……
本気で困惑して、言葉もない様子であるのを見て取って、ヴィロバもペルフィーも、何となくアインの必死さの原因を悟る。
「……更に言えば、この先の学習範囲は、君の学習がいかに進んでいても、十五歳に満たない子供には許可されないものとなります」
学習難易度に関して言うなら、おそらくアインは余裕でついてこれるだろう。
けれど、十五歳に満たない子供には許されない、最低限、この国で成人とみなされる年齢になってからしか学ばせることができない深い専門領域。
だから、これ以上の詰め込み教育をする意味もない。
「……でも……」
「知っています。それでもです」
少し惑うように反論しかけたアインを、ヴィロバは遮って言い切る。
十五歳で、成人になったとみなされて、それから初めて参加が許可される皇宮呪師側の『討伐訓練』。
それと同じことを、アインは既に済ませてしまっている。
もちろん、神官呪師学校の校長であるヴィロバはそれを知っている。
知っているが、それでも規則は規則。
不可抗力で済ませることになってしまったそれと。
そのせいで負ったであろう、心の傷を克服するためもあっての授業と。
その先の教育方針、学習内容が一致するわけではない。
「皇宮側との話し合いがまだですので、実際にこの先の学習内容をどういったものにしていくかはまだ決まってはいません。けれど、それが決まったとしても、君の学習スケジュールは一日おきに一つの授業だけになります」
だから、ヴィロバははっきりと、スケジュールに関する決定事項だけを告げた。
第1章第4話をお読みいただきありがとうございます。
神官呪師学校の校長ヴィロバからアインに対して、今後の学習方針についての具体的な説明がなされました。
ただの幼い子供ではない、アインの底知れない才能。
そして、それに振り回される周囲……。
さまざまな大人たちの思惑が交錯する中、アインを取り巻く環境はどう変化していくのか?
次回もお楽しみに!
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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞④~幻影人形で選ぶ道~
(https://ncode.syosetu.com/n1705lx/)
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【第5弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】
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ノリト&ミコト




