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第1話・信じた先で裏切られ ~受けた負担のその結果~

第1章 移り変わるは季節か人か



      第1話・信じた先で裏切られ ~受けた負担のその結果~



 騙された。



 インスとアインの二人を、一旦皇宮内神殿の医務殿に運び込む。



 アインの方は縫合してあるのに出血が止まらない、一切治っていく様子を見せないという左腕の……先の事件で、ジャンヌの護衛騎士団長であるファン卿ディアスが振るった風の神剣が放った光る刃に掠められてできたという怪我の状態を確認する。



 話に聞いていた通り、濃密な魔力が傷口に残っているせいか、じわじわと滲むような出血が続き、止血という概念が意味をなさない状態であることを見せつけられる。



 致し方なく、応急の手当てだけをして、あとは以前からアインの怪我を診ている主神殿の医務殿に任せることにし、眠ったままのアインを神殿護衛官に連れ帰らせた。



 そして、改めて診たインスは……



 目に見える怪我はないものの、血の気が引いた顔は死人のように白く青ざめ、一定に保たれてはいるが細く弱い呼吸はいつ途切れるかわからない危うさを感じさせる。



 脈も弱く、血圧も下がっていて、体温の低下も著しい。



 明らかに危険な状態。



 けれど、寝かせておく以上のことができないのもはっきりしていて……



「……くっそ……騙された……」


「メンテ呪師、言葉遣いが……」



 ぎりぎりと歯を噛みしめて思わず漏らしたウスニーに、ディオネラがそっと注意する。



「……こいつが皇宮呪師学校の在学中、当時の教員に幻影人形で死亡判定されるほどしごかれたってのは、本当なんだよな?」



 大きく息を吐いて、気持ちを無理やり切り替えて問いかけたウスニーに、ディオネラは眉を顰めて頷く。



「はい。呪師の育成に力を入れるようになって数百年……これまでの呪師学校の歴史の中でも類を見ない才能を示したラント呪師に対して、当時の教員たちが文字通り、命を危うくさせる教育を繰り返したのは事実です」



 その中には確かに幻影人形を使ったものもあり、何度も死亡判定されるような……訓練の域を大幅に超えた、拷問のような教育を繰り返されていた。



 当時、呪師学校は呪師の生活域の中でも更に閉鎖的で、外部との接点がほとんどない状態。



 それは『魔法の使い方』という、扱う者次第では第二の赤毛の魔女を生み出しかねない、危険な知識と技術を授けることが唯一許された場であったから。



 外部から来た者が修業風景を目にし、万が一にも『使い方』を知ることがないようにと、監査機関すら存在していなかった。



 それまで、それで問題が出なかったのは、呪師の才を持つ子供たちの、その才能の差がそれほど大きくなかったから。



 得手不得手はあっても、どの子供もほとんど同じように、学んだことを習得し、実践して身に着けていった。



 けれど、そこにこれまでの歴史を塗り替えるような才能の持ち主が現れ、歪んだ義務感を膨らませた教員が次々と無理難題を押し付け……インスがそれに、応えられてしまったために増長した。



 十五歳で討伐訓練に参加させられた時には、既に現役の呪師たちの平均を大幅に上回る実力を有していて……それで心を折られてしまった呪師も多い。



 なおかつ問題だったのは、インスができることが基準化してしまったこと。



 インスの理解度や実力に合わせた授業が、他の生徒と合同で行われて……当然のように他の生徒たちは全員落第生扱いをされてしまい、正しく才能を伸ばして貰えなかった。



 インスと同じころに皇宮呪師学校に在学していた生徒が、今もまだ在学中なのは当時の教員の教育方法や評価基準が歪んでいたため。



 インスが討伐訓練に参加したことで他の生徒との差が顕著に判明し、流石に監査が入ることになって……その行き過ぎた教育と言う名の虐待が判明したことで、当時の教員たちは全員犯罪者として労役についている。



 それから、皇宮呪師学校側だけではなく、神官呪師学校の方にも調査が入り、改めて監査機関の設立と、定期的な監査が定められてまだたったの三年。



 三年前、軒並み首になった教員たちとの入れ替わりで皇宮呪師学校の校長に就任したディオネラが最初に行ったことは、すべての生徒の精神的なケアと歪んだ思考の矯正だった。



「一度の授業で何度の死亡判定を繰り返されたのかまではわかりませんが、一回だけで終わったことはなかったというのも記録に残っています」



 ディオネラの言う通り、その記録があったからこそ、今回、ウスニーもインスがアインに行う授業を最終的には認めたのだ。



 幻影人形による、一回の死亡判定で命を落とすことはない。



 それはインス以外の、当時同じ授業を受けさせられていた生徒たちの記録からも明らか。



 更に、連続で死亡判定されるダメージを受けた場合に、何度目で精神崩壊するかは……個人差があることも明らかになっている。



 これも、当時の教員たちの虐待としか言えない教育の記録に残っていて……最初にその資料を見せられた時はウスニーも頭に血が上って怒鳴り散らしたくらい。



 それが、ほんの三年ほど前まで、数年にわたって続いていたのだというのだから救えない。



 インスもその授業で何度も連続で死亡判定されるようなダメージを受けることがあって、その危険回数を事前にウスニーは聞きだしていた。



 正確なことまでは覚えていないけれど、と前置きした上でインスが告げた回数が……五回。



 だから早めにやめさせたのに、三回の死亡判定でインスの精神は限界を超えていたのが今やはっきりとわかっている。



「……こいつの自己申告は信じるもんじゃないな……」



 怒りとも恨みともいえない、低く押し殺した声を漏らし、眠るインスを睨むウスニーの隣で、ディオネラも愁いの籠った眼差しを向け、重い溜め息を漏らした。


第1章第1話をお読みいただきありがとうございます。


倒れてしまったインスと、眠ってしまったアインが医務殿へ搬送された直後の場面となります。


風の神剣によって負わされたアインの左腕の怪我は、一切治る様子を見せないという絶望的な状況……。


更に深刻なのは目を覚まさないインスの方です。


外傷はないのに極めて危険な状態にある彼を見て、医呪神官のウスニーは「騙された」と歯噛みします。


インスの「自己申告」がいかにアテにならないかを痛感し、怒りとも恨みともつかない低い声と重い溜め息を漏らす二人の姿には、やっぱり大人組の悲哀を感じずにはいられません(笑)


果たして、二人の治療はここからどうなっていくのか?


そして大人たちの心労はどこまで積み重なるのか!?


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【第2部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第2部・レッド・フレイムの残照】

(https://ncode.syosetu.com/n5488lq/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【番外編・第2弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力ちからの残滓~

(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)


【番外編・第3弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞③~重なり合うのは悪意おもいの欠片~

(https://ncode.syosetu.com/n5078lu/)


【番外編・第4弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞④~幻影人形ビジョン・ドールで選ぶ道~

(https://ncode.syosetu.com/n1705lx/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第5弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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