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第4話・予想はしても怖いこと ~閉ざした視界を開いて見るのは~

第2章 薄日に眠る祈りの先に



    第4話・予想はしても怖いこと ~閉ざした視界を開いて見るのは~



 ペルフィーは、アインが向かう先が皇宮内にある神殿に所属する医務殿だと知った時に混乱し、恐怖するのではないかと考えたが、アインはむしろ納得していた。



 それはそうだ。



 だって、アインは自分の目で()()いるのだから。



 退院して、最初の授業の時に、インスが自分の心身を、文字通り削って導いてくれたことを。



 もちろん、無事であってくれたら、その方がよっぽど良かったけれど……



 あの日、自分が眠ってしまった後、インスの方も無事では済まなかっただろうと……理解わかっていたから、そこまでの混乱はなかった。



 混乱はなかったけれど……




「……来たか……」




 朝の内に連絡を受けていた皇宮医務殿の長官であるウスニー=メンテは、疲れた顔でアインを迎え入れ、そのままアインを連れてインスの元へと案内した。




 静まり返った皇宮医務殿の入院棟には、今はそれほど多くの患者が居ないのか、それともインスが使っている病室の周辺には人を入れていないのか……



 異常なほどの静けさと、微かな薬品の香りだけで、嫌でも緊張感が高まる。



 特に、ウスニーの顔が疲れ切っているように見えたのも怖くて……



 何か、自分が思っているよりも状況が悪いのではないかと、不安になる。




 奥へと進むウスニーについて歩くアインの心臓が、ギシギシと嫌な音を立てているように感じて、だんだん、体の平衡感覚がなくなっていく。




 視界がぐるぐると回って、気持ちが悪くなってきた。



 そんな、アインの不調に気づいたのだろう。



 不意に足を止めたウスニーが、ふらふらと危なっかしく歩くアインを抱き止め、抱き上げる。




「……少し休憩してからにするか?」




 呼吸が乱れ、苦し気なアインに、一応問いかけたウスニーだったが、真っ青な顔で、それでも首を横に振られて、そっと溜め息を飲み込んだ。




「……なら、このまま向かうぞ?」


「……はい……お願い、します……」




 抱き上げたままのアインに確認すれば、泣きそうな顔で、それでもきっぱりとそう答えられる。




 向かった先、南向きに設えられた病室で、インスは静かに眠っていた。



 一見すると顔色も悪くはないし、呼吸も落ち着いている。



 本当に、ただただ眠っているだけにしか見えないけれども、それでも授業から既に十日弱。



 ずっと眠り続けているせいで少し瘦せて、頬がこけているようにも見える。



 外側から見える範囲の異変はそのくらいか……けれど。




「……………」




 そっと、ベッド脇の椅子に下ろされたアインは目を閉じた。



 一度、大きく息を吸って、吐いて、呼吸を整え、意識を集中させ、ゆっくりと、()()()()



 普段は遮断して、必要以上に()()()ようにしている、見えざるものを見る目を……『見者けんじゃ』の目を開く。



 ほんの一瞬。高まった魔力の気配に警戒したウスニーだったが、特に何も起こらず、ただアインがその膨大な量の自身の魔力を完璧に制御している気配だけを感じ取って戦慄した。




(……嘘だろう……この量の魔力を、掌握している……?)




 知らず、冷たい汗が背筋を伝う。



 息さえできずに見つめていると、すぐに収束した()()がゆっくりとインスの全身を撫でるように通り過ぎていく気配を感じる。




(……何を、しているんだ……? こいつは……?)




 理解できない現象に、ほんの一瞬恐慌しかけて、即座に意志の力で押さえ込む。



 じっと、インスの様子を見つめるアインは、まず上から下まで、全身を()()、次に、ゆっくりと、慎重に頭の先から、指の先、つま先までもを()()いく。



 目には見えない。けれども確かに存在している、魔力を、精神を、ゆっくりと確認して行って、途中でくしゃりと顔を歪めた。



 その瞬間に呼吸が乱れて、その身に纏う魔力が揺らめく。



 けれど、それだけ。それ以上は乱さない。乱させない。



 押さえ込んで、呑み込んで、外には出さないように、意識して呼吸を続ける。



 そうっと、恐れるように、あるいは、縋るように、小さな右手を伸ばして、眠るインスの左手に触れた。



 その指先が、思っていたよりはずっとあたたかくて……むしろ、アインの手の方が冷え切っていて……少しだけ、ホッとする。




「……アイン……」




 強張った、堅い声がウスニーの唇から洩れた。


第2章第4話をお読みいただきありがとうございます。


ついにアインが皇宮医務殿を訪れて、眠り続けるインスと対面を果たしました。


「見者の目」を持つアインだからこそ視えてしまう、大好きな人の本当の状態。


普通なら泣き叫んでパニックになってもおかしくない状況で、自分の魔力が周囲に影響を及ぼさないようにと、幼い体で必死にすべてを呑み込んで耐えます。


そっと触れた指先から伝わる「あたたかさ」だけが、今の彼にとってせめてもの救いなのかもしれません。


幼い子供が抱え込むにはあまりにも重い沈黙の再会。


アインの様子に息を呑むウスニーですが、果たしてこの後どうなっていくのか?


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

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【第2部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第2部・レッド・フレイムの残照】

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【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

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【番外編・第2弾はこちら】


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【番外編・第3弾はこちら】


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【番外編・第4弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞④~幻影人形ビジョン・ドールで選ぶ道~

(https://ncode.syosetu.com/n1705lx/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第5弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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