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木?機。

 揃えられた模造花が多種多様な季節の様相を部屋の隅で呈している。その部屋は薄暗く、わずかにひんやりとしている。しかし、教室ほどの大きさの一方を占めている,、少しくぼんだ部分が特徴のガラスから入ってくる光によって、黒と灰の壁が薄青く染まっている。その青い光は、静かな室内を少し静謐なものとしていた。

彼はそこで毎日仕事をしている。にもかかわらず、その部屋に入るたびに目の前にある光景に目を奪われ、息をのんでしまう。

 彼の目の前にあったものは、とても巨大で、不気味なほど青い群青の水をたたえた水槽。そして、その中に佇んでいる大きな木であった。水槽の壁に近づき、上を見上げる。今日も水面は見えず、ただあるのは赤く脈打つ木の幹と鈍い色をしている金属の実だけであった。

 部屋には机とマグカップ、そして椅子。花があってもなお殺風景な気配を隠せはしなかった。

 椅子に腰を下ろしながら、脳内で時間を確認する。

"08:59"

"09;00になりました。作業を開始。軍事第三エクステント残り個体数30,本日の回収予想数6から8。9:15より本日最初の引き上げを開始。待機せよ"

 聞きながら彼は無造作マグカップを傾ける。黒い液体は香ばしい香りをふわっと漂わせ喉の奥へと落ちていった。彼はとても安穏とした気持ちでただ群青を眺め時間を過ごしていた。この仕事は待ち時間が多く、することもさして多くない。はっきり言うとあまり人気がない仕事だ。だが、男はこれが好きだった。ただただのんびりと背もたれに背を預け、コーヒーを流し込み、伸びをする、音のしない静かな時間が。

「そろそろかな?」

"9:09" "09:10" まもなく収穫が始まります。準備をしてください。

 「了解」

 アナウンスに意味のない返事をしてから、名残惜しそうに背もたれと別れる。そして水槽の脇にあるパネルを操作し始めた。

 認証しました、第2樹管理員、289番。作業に映ってください。

 機械音声が終わると、男は水槽の中へと目を向けた。すると樹がゆっくりと動き出す。約半回転ほどしただろうか、木の枝と、それについている実が近づいてきた。すると、実はガラスのくぼんでいる部分にぴったりとはまり込んだ。

 そして実が開く。

 中には赤ん坊が入っていた。男は慣れた手つきでその子を抱き上げるとゆっくりと実を閉め、その子を抱いて部屋から出る。自動ドアから外に出ると機械が待機していた。その機械はベビーカーのような形をしているが、子供を乗せるところがカプセルのように作られていた。

 男はカプセルを開くと子供を慎重に乗せ、カプセルを閉めた。そして持ち手に取り付けられたボタンをいくつか押すと、ひとりでに動き出したベビーカーを脇目に見て自動ドアから収穫室へと戻っていった。

 "視点切り替え,対象,34892847番 侵入成功"

 子供を乗せた機械は、タイヤを回しながら廊下をゆっくりと進んでいく。障害物感知センサーには踏み出してはいけない赤と何もない青色の無機質な状態が表示されるだけであった。

 そのあまりに代わり映えのしない視覚情報に飽き飽きとしたため、カプセル内部の状態へと視線を向ける。

 "内部情報閲覧>>>許可されました 内部格納物体情報 ヒト 個体名 軍事エクステント41-270 血圧 体温 呼吸状況 問題なし 酸素および麻酔薬の供給を継続"

 "無事に出てきてくれてよかった。"

 伊田木はひとりごとをつぶやく。それは誰にも聞こえるはずもなく、演算の海に沈んでいった。

 "ここからは私の役割だ"

 機械はいくつかの交差点を回りながら進んでいく。そして一つの扉の中へ入っていった。

 "内部情報閲覧>>>引き続き許可 現在命令内容 3-9-67番への個体名 軍事エクステント41-270の輸送 状態 輸送中....99%....100%"

 "視点切り替え,対象,87659801番 侵入成功"

 機械が入っていった先、そこは手術室であった。

 基本的に白で統一された内観の中、上からつるされている電気からは強い光が台の上を照らしていた。その周りにはいくつかカメラがあり、万一の場合に備えていた。

 カメラから見える画像は少し遠く見えずらい。そのため、一抹の不安を感じてはいた。それを取り除く方法はある。だが、いまリスクを負うわけにはいかなかった。


「これはなんだ?#正常です」


 手術が始まる。台に子供が乗せられた。手術台の横に立つのは二人と一台。ここでは医療用補助機械が横につき、吸引や機械だしを行う。

 機械が内視鏡を渡す。そしてゆっくりと頭に入れていった。

 一つ間違えれば死に至る可能性のある手術だが、彼らはとても冷静だ。

 頭の状態を確認した後、ゆっくりと金属でできたチップを中に入れていった。

 

 それを確認し、伊田木は動き出す。


 "内部侵入 チップ 型番41-270 成功"


"チップと脳の接続 完了"

"視界操作システムの起動....成功"

"中枢情報共有ネットワークとの通信テスト 成功"

"中枢強制遮断システムのテスト....成功"

 

"結果....問題なし すべて正常に動作"


"あなたの人生に幸のあらんことを"


「ついに見つけた。仮説は正しかった」

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