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研究室内恋愛はやめておけ(仮)  作者: 佐々木 秋


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5/5

教え教えられ

[ねぇ、キミ、ここの機械の設定どうすれば良いかわかる?]

彼女は他人のことをやや平坦な発音で”キミ”と呼ぶ。はじめのころは違和感があったのだが、だんだん慣れてきた。

[ニシ先生が聞けって?]

[ニシ先生に直接聞いたわけじゃないけど。去年、教授のところでキミが使っていたとリー先輩から聞いたの]

 そちら側の情報ソースかと自分の中で納得する。リー先輩は教授のところの学生で現在、修士2年生だ。僕はあまり、話したことがないが帰国子女で英語、日本語を含め3,4か国語を操る才女という話だ。

 考えてみれば、言語の壁が薄いというのはそれだけで話しやすいのだろう。そんなどうでもよいような、よくないようなことを考えながら、彼女に先を促す。

[何ができないの?確かにあのソフト、顕微鏡のコントロールができて、便利だけど、かなりクセが強くて設定の変更は結局やってないんだ。どのあたりで詰まった?とりあえず、機器本体がある場所まで行こう。」

「わかった。私はこちらにちょっと用があるから先に動物実験室に入ってて。」

パタパタと去ろうとする彼女を呼び止める。

「ちょっとまってくれ。僕は動物実験室の入室許可は持っていない。一緒にいてくれないと入れない。」

 部屋を出ていこうとした彼女は驚いた顔をして足を止める。

「なんでキミが持ってないの?私よりセンパイなのに?」

「僕は工学エンジニアだから、これまで動物実験室に入る必要なかったんだよ。君みたいに動物実験にしっかり関わり始めたのはニシ研に入ってから。」 

「それ、やりづらくない?」

「前はよかったけどね。最近はちょっと面倒。今、ニシ先生に入室許可証をせびってる最中だよ。」

去年まではデータ処理がメインだったのだが、ニシ研に入ってからはデバイスの改良の比重が多くなってきていた。ニシ研にスターターメンバーとして入った理由に物理系の計測デバイスを扱えるという理由があったため、デバイス改良自体は良いのだが…デバイスを実際に使用している環境でテストできない、のは普通に開発がやりづらい。

「せびる?」

「あー、要求する。Demand, Require,そんな感じ。」

日常的な日本語会話にはほぼ困らない彼女だが、さすがにスラングじみていると知らない単語が多いらしい。

というわけで彼女に連れられて動物実験施設に入室し、件のデバイスを実地で見る。

彼女の説明(日本語より慣れている、テクニカルタームが多いなどの理由から途中から英語になった)は非常にわかりやすかった。僕はそこまで英語のリスニングが得意なわけではないので、[英語での説明がわかりやすかった]というのは彼女の説明が上手かったということが大きいのだろう。

 「で、ここまではできたけど、ここ以降の設定ができなかったの」

[逆にここまでできたのか。すごいな。]

純粋に驚いた。

彼女の機械系の知識はほとんどゼロというのは最初の2週間でわかったのだが、その後の伸び率がすごい。

 僕も彼女もニシ研のスターターメンバーという点は同じだ。しかし、去年から教授の研究室にいて研究グループ全体に所属していた(?)年数は僕の方が長いということになるから、彼女は僕のことを先輩ととらえている節があった。僕以外のメンバーは基本的に生物系でプログラムのことはわからないらしく、結果的に僕は彼女から「何か機械系でわからなかったら聞ける先輩」という認識をされていた。そして僕は「後輩ができて、多様な質問をさばく必要が出てくると、自分の無理解が身に染みる」と言っていた去年の先輩の言葉を実感していた。


純粋な気持ちでされる初心者の難質問ほどこちらの無理解を抉られるものはないです。

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