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王子ちゃんはお姫様に恋をした♡♡  作者: 櫻木サヱ


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12/14

決断の朝

卒業式を一週間後に控えた朝、海辺の町には澄んだ空気が広がっていた。

教室の窓から見える水平線はいつもより遠く、まるでこれから先の道の長さを告げているみたいだった。


さくらは学校に来る途中、足を止めて空を見上げた。

手の中には、ユウからもらった小さな手紙と、自分で書いた大学の願書の控え。

胸の中には言葉にしきれない思いが渦巻いていた。


「自分の気持ちをどうすればいいのか」──

それを知るために、さくらは昨夜、母のアズサと長く話をした。

言えないことがあると言っていたアズサは、はじめは硬く、愛情を見せないように振る舞っていたけれど、夜が深くなると少しずつ本音を零した。


「あなたが転校を繰り返したのは、私のせいだ」

アズサがそう言ったとき、さくらの胸がぎゅっと締めつけられた。

仕事の都合で動き続けた結果、母親としての弱さを見せたくなくて、強く言ってしまったこと。

でも、本当は娘の未来を守りたいだけだったこと。

そして、今回の転勤は事務的に「決定」していたけれど、どうにか調整する余地がある可能性があることを匂わせた。


「私は仕事で守るべきものがある。けれどあなたの未来は、それ以上に大事よ」

そう言って、アズサはさくらの手を強く握った。

具体的な話はまだ完全に詰まってはいなかったが、話し合いの余地がゼロではない──それだけで、さくらの心は少し軽くなった。


その朝、ユウは校門の前でさくらを待っていた。

いつもより少しだけ早く来て、手には小さな紙袋を持っている。中身はさくらの好きなパン屋の差し入れ。緊張で手が震えていたのを、さくらは指先で見逃さなかった。


「行こうか」

ユウの声はいつもより静かで、どこか決意がこもっていた。


二人は校庭のあの丘へ歩いた。

風が砂の匂いを運び、季節は少しずつ春へ移ろうとしている。


「昨日、話したんだ。母さんと」

さくらが口を開くと、ユウは黙って頷いた。


「結果はまだ分からない。けど、可能性があるって言われた。完全な答えはまだ。でも——私は、もう逃げないで向き合うって決めた。あなたにも言わなきゃ、って思って」


ユウの胸の中で何かが弾けるように温かくなった。


「俺も、逃げない。どんな結果になっても、一緒に考える」


さくらは目を細め、いくつも言葉を飲み込んだあと、静かに言った。


「もし母さんが調整できなかったとしても——私はあなたを忘れない。だけど、私は自分の道も見たい。離れても、一緒にいられる方法を探したい」


「一緒に探すよ」

ユウは真っ直ぐに答えた。

その言葉に嘘はなく、誓いにも似た力があった。


二人はそのまま手をつなぎ、丘から海を見下ろした。

波はいつも通り穏やかに寄せては返していた。それを見ていると、ふと「時間は流れる。でも君がそこにいるなら、それでいい」という気持ちが胸に満ちてきた。


11章は終わると同時に、二人の内側で小さな決定が固まっていった。

どんな未来が来ても、まずは向き合う。

それは恋の甘さだけではない、選択の重さでもある。

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