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王子ちゃんはお姫様に恋をした♡♡  作者: 櫻木サヱ


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11/14

離れていく日々

さくらと本音を交わした翌日。

教室で見かけたさくらは、昨日より表情が穏やかだった。

ほんの少しだけ、心の壁が薄くなったように見える。


ユウは朝の挨拶をしようと近づこうとする。

だが、さくらは一瞬だけ笑って──

そっと目をそらしてしまった。


「……避けられてる?」


小さくつぶやいた声は、自分でも驚くほど弱かった。


ミナミが後ろから覗き込む。


「ユウ、さくらちゃん……距離また取ってるっぽいよ?」


「……なんでだろう。昨日はあんなに……」


「きっと、逆に怖くなっちゃったんだよ。

 本音言って、好きって言い合って、

 離れるのがもっとつらくなるのが分かったから……」


ミナミの言葉は優しいが、胸に痛いほど刺さった。


コウも横から言う。


「今のさくらちゃん、葛藤真っ最中だろ。

 離れたいわけじゃなくて、離れなきゃダメだから苦しんでんだよ」


ユウは深く息を吐いた。


「……会って話すよ。ちゃんと」


そう言っても、心はざわついて止まらない。



昼休み、ユウは屋上へ向かった。

さくらが時々ひとりで来ていた場所。


扉を開けると、案の定──

フェンスのそばにさくらが立っていた。


彼女は海の方を見ていて、風が髪を揺らしている。

静かで、だけど寂しさが滲む後ろ姿。


「さくら」


振り返った彼女の目には、驚きと……ほんの少しの迷いがあった。


「ユウくん……どうしたの?」


「避けてるよね。俺のこと」


さくらは言葉を詰まらせた。


「ごめん……。

 でもね、ユウくんと話すと……苦しくなるの。

 離れたくないって思っちゃうから……」


ユウは一歩近づき、柵にもたれた。


「思っていいよ。

 思っちゃいけないなんて、自分に言わなくていい」


「でも……来月には、私はここにいないんだよ……?

 なのに好きになったら……もっとつらいよ……」


「つらくても、好きなんでしょ?」


さくらは小さく震えながら、こくんと頷いた。


その瞬間、ユウの胸が熱くなる。


「だったら、つらいままでいいよ。

 会える時間が少ないからって、気持ちまで無くさなくていい」


さくらは唇を噛む。


「ユウくんは……ずっと言ってくれるよね……。

 私のこと好きだって……」


「当たり前だよ」


「聞くとね……嬉しくて……もっと一緒にいたくなるの……。

 でも、それが……一番怖いの……!」


声が震えて、涙がこぼれた。


ユウはそっと近づき、彼女の肩に手を置こうとした。


だが──さくらは後ずさった。


「ユウくん……もう……抱きしめられたら……

 たぶん、私……“行きたくない”って言っちゃう……!」


その言葉は、思っていたよりずっと重かった。


ユウは拳を握りしめる。


「行きたくないなら、言っていいのに……」


「言えないよ!

 ママは仕事で動かなきゃいけなくて、

 私だけ『残りたい』なんて言ったら……迷惑をかけるの!

 私がワガママ言ったら、負担になるの!

 そんなの……できないよ……!」


涙があふれて、さくらの肩が震える。


ユウはそっと息を吸った。


「……さくら。

 優しさだけで、自分を傷つけるのは……優しくないよ」


さくらは顔をくしゃっとさせて泣いた。


「どうすればいいの……?

 どっちを選んでもつらいよ……!」


ユウも胸が痛くてたまらなかった。


「俺には……全部は救えないかもしれない。

 でも、さくらの気持ちを一人きりにしたくない」


ゆっくりと近づき、今度こそ離れないように、

そっと手を伸ばす。


さくらは涙で濡れた目でユウを見て──

ほんの一瞬だけ迷って、

ようやく、ユウの胸元に顔をうずめた。


「……ユウくん……少しだけ……こうしてていい……?」


「もちろんだよ」


夕陽に染まる屋上で、二人はそっと寄り添った。


離れる予定の恋なのに、

今だけは離れられなかった。

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