第6話中編:~★~ヌマ・チョコレート・ブラックホール~★~
蒔那に膝枕される朝黎。
おだやかな潮騒と、風鈴の音で満たされる室内。
「私、『リーン、リーン』というこの鈴の音、結構好きなんです、昔っから」
「へぇ~、蒔那に過去在り、ってヤツかな」
「恋多き女かもしれませんよ、私は」
「あ~れ~?
もしかして嫉妬させようとしてる?
それとも単なる、ババァ自慢?」
「――はぁ?
はぁ~~~んん?
別に、そういう訳でも、つもりでも、ありませんが?」
「僕は嫉妬なんかしないぜ?
心が広いんだ」
「えぇ、分かってますとも。
どんな男と比べても遜色ありません。
これまでのどんな男と比べても、ね」
「そりゃ嬉しいね――――」
ついにそっぽを向く朝黎。
それを見て、心がゾワゾワする蒔那。
「どうしたの?怒らせちゃった?」
「僕のこと怒らせたかったんだろ、おめでと」
「ごめんね?」
「そうやって機嫌悪くしておいて、仲直りしてさ。
その後にハグするの好きだもんな、君は。
少しずつ心に傷が増えてゆく僕の気なんて、知りもせずに」
いけないと知りながらも心が搔き立てられ、震える蒔那。
癖になるざわめき。
朝黎におでこをつける。
「でも、最後は許してくれるんでしょ」
「……」
「知ってるもん、優しいんだもん。
甘えて、ごめんね?」
「……」
「何があっても絶対そばにいてくれる、朝黎が一番、大好きなんだよ?」
「……」
「朝黎の優しさ直に受けたくて意地悪しちゃったの、許して、ね?」
「――えいっ」
正面から鼻を押さえつけられる蒔那。
「やーい、蒔那ブタっぱな。
そうだ、これからイジイジ蒔那が僕を傷つけてくるたびにブタっぱなにしてやろう」
「――やめなさい」
「ブタっぱな蒔那との思い出が増えちゃうんだなぁ、楽しみ~」
「――や、め、な、さい」
「なんで?
え?僕はブタっぱな蒔那、きらいじゃないよ?
これくらいの方がかわいくていいじゃん。
僕の中の君がどんどんブタっぱなになっていく。
うふふふ。
蒔那がブタっぱなでも、いつも通り絶対に離れないから安心して。
大丈夫だから」
――フシュウウウウウウウウウウウウウウウウウ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………。
熱と白煙と謎の轟音が沸き上がる。
「や、め、な、さ、い……」
「おっとぉ――――――、ハハハ。
暴力はいけないんだどぉ~?
暴力による不毛な争いはイヤだどぉ~?」
「そんなことはわかっています……!」
「あっち!あっつい!ヤバ……」
「すみません、暴走がとまらずに……。
でも、抱きしめてくれますよね?
さっきそんなこと、言いましたもんね?」
「参った!うそうそ!僕の負け!」
――フシュウウウウウウウウウウウウウウウウウ……。
「ごめんねは?」
「……」
「ごめんね、でしょ?」
「蒔那が悪いんじゃん、しーらないっ」
ぴゅっ、と、逃げ出す朝黎。
「え、そんな……」
キョロキョロとする蒔那。
「ふふふ、へっへっへーーーい!
置いて行ってやったどぉ~!
僕の気持ちわかれ~!
くっくくく……」
まず "ヒュっ" と、音だけがした。
音の出所を確認する間もなく、背後に気配がした。
視界から薪那は消えている。
そしてどういう訳だか、朝黎の四肢は動かないのだった。
微動だに出来ない己の無力を確認し尽くした焦燥の折に、丁度迫るように、蒔那の冷たい舌が耳を這う。
ゆ~っくりと舐り上げられ、耳元にゼロ距離で囁かれる。
薪那がどんな形態をとっているか?
想像してはならない。
異様に長く伸びた首と四肢と触手とで、この世界を破壊し尽くす準備を始めているかもしれないから。
「ここから、狼狽える私のこと見てたんだねぇ?
置いて行かれて、さびしがってる私のこと見てたんだねぇ?
楽しかったねぇ?」
「ひ、ひいいいいいい~~!
ひいいいいいいいいい~~~~!」」
「ダメなんだよ?
勝手に離れられて、置いてかれた方はどんな気持ち?
もし、戻ってくるタイミングが悪くて、会えなくなったりしちゃったらどうするの?
いいの?」
「あばばばばばば……よくない、でち……」
「だ、よ、ねぇ?」
それから、振り返ることも出来ぬうち、得体の知れない機械繊維質の触手に抱かれて……。
「ううううううううううううううううううううう?!
うぅぅぅぅぅぅぅぅゎぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――……」
およそ300mの宙に浮く朝黎。
「ふふふ、おーい、おーい!
ともにゃーー!」
「ごめんなさいごめんなさい!
ごめんなさあああああああああいい!」
「きこえないよぉー?」
地表では蒔那が、無邪気に手を振っている。
「さ、さむいよぅ……う、うぅ~~~~。
あぁ――――…。
あっ。
あったか~い。
あ、つめた~い。
ふ、ふふ。
そっかそっか。
お漏らししたんだね、僕、そっか……」
ひとしきり泣き終え、ゆっくり降ろされてゆく朝黎。
地面に。
――そしてズボンも。
顔を覆う他ない。
「――さ。
しーしー、上手に出来まちたねぇ~?
キレイ、キレイに、してあげまちょうねぇ~」
「うぐぅ~~、グスン。
ふ、ふぐぅ……」
「ともにゃ?
ともにゃはもう、私がいないとダメなんだよ?
これからもともにゃがそのことを分かってくれるまで、たくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさん分からせてあげるからね。絶対なんだよ?もう決まってることなんだよ?絶対不変なの。ともにゃが分かってくれるまで、まきにゃも頑張るから。沢山思い出作ろうね?」
「僕の、ちっぽけな、男のプライドが……」
「いらないんだよ?そんなもの、全部私に預けて?いいんだよ、もう。私のこと以外は、ぜんぶ余計なの。何も考えなくてもいいんだよ?全部やってあげるからね。全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部ぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶやってあげるの。なんでかわかる?まきにゃがともにゃの全部だからなの。その逆もまた然りなの。それ以外悩んだり考えたりするのは余計なの。わかる?むずかしいかな?でもだいじょうぶだよ?じかんはたくさんあるもんね。わからせてあげるもんね。ともにゃはいいこだから、すぐにわかるもんね?」
「はい……グスン。
もう、わかってます……」
「え、いい子~~っ!!!?!?
もう、何にも考えないで、いいんでちゅよ~?」
「こわい……、グスン……。
あぁ、あっ、あぁ。
でも、やっぱり好き――――――うっ!
~~うぅ―――、グスン……」
「うふふふふ、好きになりすぎて、こわい?
いいんでちゅよ、頑張ったもんねぇ?
さぁさぁ、キレイ、キレイでちゅよぉ~。
うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
愛のカタチってさ、無数にあるんよね。
朝黎は知っている……。
いや、分からされているのだ。
以後のストーリーはエブリスタで!
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