第6話前編:~★~空から落ちてきた、蒔那!~★~
「おーい、朝黎!ずいぶん久しぶりな気がするよな~」
「うんうん、ホントに久しぶりな気がするよ、慈恵路!」
「お前と会ったのなんて、ついさっきのような気もするんだけどな~」
「うんうん、さっきぶり~」
朝黎は、どこにでもあるようなファミリーレストランで、学生時代から付き合いのある友人と会っていた。
朝黎の友人、慈恵路――。
明るい茶色の髪は総髪。
筋肉質で、やや背高。
誰からも慕われる、あたたかい心と声の持ち主。
彼と朝黎は、高校時代の同級生。
テストの成績は良いのに、真っ直ぐおっちょこちょいで、誰のことも傷つけない朝黎のことを気に入り、優しく見守ってきた、どこかお兄ちゃんみたいな、朝黎の友人。
「でさ、慈恵路。
僕もついに同棲してさ」
「えっ?!?!
三十路のあの夜、桜の木に永遠の忠誠を誓った朝黎が?
初心なハートが全然ギザギザしてない、豆腐メンタルの朝黎が?
まったまたぁ~っ……」
「本当だよ!
蒔那って言うんだ。
僕と薪那が出会ったのはさぁ~」
~ほわんほわんほわんほわん、ほわわわわ~ん~
ある日朝黎が、仕事帰りの夕方にトボトボと歩いていた。
『世界がかつてないほどの隆盛を見せる、資本主義の只中。
資産の有無が幸福の度合いを押し付け、生産性ばかりが持て囃され、人の心は取り残されている。
様々な媒体で、様々な活躍が喧伝され、自分のいる位置に嫌気がさす。
あり余る情報の前に、溺れる寸前。
息継ぎが足りない。
平和な時代なんだろうけど、ノイズが多すぎて嫌になってくる。
つらい時代に放り出されてしまった。
このまま生きていても、僕の人生なんかに意味があるのかな――』
朝黎は、空の色を見ている内に少しやさぐれて、ちょっとカッコつけた溜息を吐きながら、そんなことを思っていた。
こんな黄昏時にも、瞬く星がある。
ロマンチックじゃないか。
だれか、ロマンチックおくれよ……。
「はぁ……」
風の音?ん?
僕の溜息、こんなに長くないぞ?
何だこの音?
――え、上?!?!?!
なに?!?!?!?!
――――すると、空から少女が、降ってきた――――
ひゅううううううううううううううううう
「え?」
上から降る影が、どんどん大きくなる。
何やら、目も合っているようで――――。
ひゅううううううううううううううううううううう
――――――シュタっ。
「こんにちは、あるいはこんばんはかしら。
黄昏時の挨拶を選ぶのは、難しいものですね」
「ええええええ~~?!?!?!
何この状況?!
――――――誰っ?」
朝黎の目に映る彼女はと言うと、髪は、光を反射するたびに色を変える玉虫色。瞳は、星々をそのまま納めたかのように、磨いて光った宝石のようで。鈴を鳴らすような声に、魅惑的なボディラインを惜しげもなく顕界に晒す……。
「私は、AIみたいなもの搭載型メイドロボ系超銀河級美少女ヒロイン。
――――蒔那。
出来心から主人を挑発したら、怒り狂った夫人に捨てられてしまいました。
こんなにも可憐なのに、住むところがないのです。
哀れで儚く狂おしいほどにキュートな私を、あなたの家に連れてってください」
「うっひゃーーー!!!!
ラブコメ展開キタ、ってやつじゃん!?!
マジかよ?!」
「マジです」
朝黎は咳払いして、ひと際ダンディな低い声を出した。
「幽峰 朝黎と申します。
お嬢さん、蒔那さんと、言ったかね?」
「えぇ、蒔那です。
正真正銘の不束者です」
「さぁ、慎ましやかながらも、雨風に曝されることのなき、愛の巣に帰りましょう……」
「あなたに、私を深く愛せるかしら、試させてもらうわ」
「へぇ~、おもしろいおんなっ……☆彡
うんうんうんうん、一緒に帰ろう!」
☆
「……ってことがあってさぁ~」
「はあっ?
お前、それで受け入れたって言うのかよ……」
「何か変かな?」
「てかそれ、お前の妄想だろ?
ひくわぁ――」




