不思議な本屋へ
学校を出て、いつもと変わらない帰り道……
そこで僕はとても不思議な出会いをした。
見慣れたいつもの道を、少し早歩きで進んでいく。
流れる風景には目もくれないで、家へと一直線で歩いていた。
家に着いたら何をしようかなと、ごくありふれたことを考えて歩く。
その時、僕は珍しくその歩みを止めた……
こんなところに道があったっけ?
木々が生い茂る中、暗い道が続いている。
恐る恐る近づいてみると、どうやら奥に建物があるようだった。
いつもだったら、素通りするだろう。しかし雰囲気につられて、先へ進んでいった。
珍しく好奇心に従って、冒険する気になった。
奥を進んでいくと少し先に古びた建物が立っていた。どうやら本屋であるようだ。
木漏れ日のさす中、年季の入ったドアに手を伸ばす。軋む音を立てるドア。外とは異なる雰囲気に包まれた店内へと入った。
店には骨董品のようなものがいくつか置かれていた。雰囲気がある。どんな本があるのか見ていると、どうやら古本のようなものとともに、他の本屋と変わらない本も置いてあるようだった。
奥を見ると独特な内装に包まれる中、1人でおばあさんが本の整理をしていた。
「おや珍しい、お客さんですか。」
「いらっしゃいませ。どうぞごゆっくりしていってください。」
優しい声でおばあさんは言った。
軽く会釈をした僕は、店内を歩いていく。木々に囲まれた中にあったから、何か特別なものでも置いてあるのかと思ったが、どうやら普通の本屋のようだ。
客があまりきていないようだが、こんな奥まったところにあればそれは当然かもしれない。
そんなことを考えながら店内を歩いていると、おばあさんに話しかけられた。
「本はお好きですか?」
「いえ……あまり読まないので。」急に話しかけられて、少し戸惑いながら答える。
「それはもったいない。漫画なども読まないのですか?」
はい。と答える。
「そうなんですか。ぜひ読んでみてください手を伸ばしてみると意外と面白いものですよ。」
今はネットが普及した時代。僕も一日中スマホと一緒にいるようなものだ。思えば
、活字になんて全然ふれたことがなかった。確かに他のことを初めてみるのもいいかもしれない。少し興味もあったし……
関心があまりなかった僕でもよく聞いたことのある漫画を手に取った。小説よりもハードルは低いだろう。
「これください。」おばあさんに代金を払う。
店から出て家へと歩いていく。今日は寄り道をしてしまったな。しかしこんなのも悪くない。どこか楽しげな足取りで一歩一歩進んで行った。
翌日、学校を飛び出し、また家へ一直線。続きを読みに軽快な足取りで進む。
ふと、昨日通った道を見てみる。そこには道はなく、木々が生い茂っていた。