プロローグ『お約束の始まり?!』
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目が覚めると、草原が辺り一面に広がり、空には飛龍が飛びまわり、遠くに見える街は、まるでマチュピチュの様な古代都市が円形の城壁に囲まれて雄大に存在する・・
こともなく!!
そこは、見慣れた天井と心地のいい触り心地のベッド、先日購入したばかりのデスクトップパソコンとプリンターが置かれたワークデスクがあり、左隣には半分以上が漫画で埋め尽くされている本棚。
紛れもなく俺の部屋だ・・
あれ??
確か俺って・・
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「いってきまーす!」
いつものように、愛猫のミーヤをワシャワシャしてしっかりと癒されたのを感じ、本日の朝の充電を終えた。腕に付けたデジタル時計を確認すると、そろそろ家を出る時間。それを確認しミーヤに家を出ることを告げたところだ。
一人暮らしを始めて5年くらいか。いや、今はミーヤがいるから1人ではないっ!なんて、しょうもないことを考えながら、本日の待ち合わせ場所へと向かっていく。今日の資料はなかなかいい出来だから、サクッと終わらせてジムにでも行くかな。昼は久しぶりにテツオの店にでも行こう!そんな、なんとなく今日1日の流れをイメージしながら、最寄りの目黒駅へと向かう。
今日は駅近くのカフェで待ち合わせとなっている。いつもであれば、我が家に来てもらって打ち合わせ等をするのだが、今日先方は新人さんを同行しているらしく、しかも猫アレルギーと来たもんだから仕方なくこちらから出向くことになったわけだ。
全く、勉強のためとは言えそんなヤツ連れ立って来んなよな。いや、でも猫好きだけどアレルギーで触らない人も居るっていうし、もしそうなら辛いなんてもんじゃないよな!よし、俺のコレクション写真も準備しておこう!
一人で勝手にそんなことを妄想しながら歩いていると、気づけば待ち合わせの場所についていた。
「樋口さん、お待たせ。そちらが例の新人さん?」
「こんにちはマサヒロさん。こちらが先日お話ししました…」
「は、初めましてっ!コンにょ…今野まキュこでしゅっ!!よよよろしくおねがいしますっ!」///
「あ、うん…今野さんね(マキュコってマキコでいいんだよな)宜しく。知ってるだろうけど改めて。世川正啓です。宜しく」
「ごめんなさいね、正啓さん。この子仕事はできるんだけど極度のあがり症で。初対面の人の前だとこの有様なのよ。」
「しゅ主任!恥ずかしいのであまり言わないで下さいよー!」///
うん、言われなくても誰でも分かるけどね…
「まー、誰にでも得意不得意はあるから、徐々に慣れていけばいいんじゃないかな?だから樋口さんもこうして連れ出してるんだろう?」
「そうね、さすが人の心理を読み解く力に長けてる“洞察の魔術師”なだけはあるわね!」
「その呼び名はやめろって言ってるだろ。それにこれくらいなら誰でも分かるっての」
ジーーー
「「なに(かな)??」」
「あ、、すす、すみません…なんか、お二人って、仲が宜しいなー、、、って!!すみません!変なこと言いましゅた、!」
「大丈夫よ。私たちは同じ高校出身の同級生なの。公私混同しないように、仕事の話をする時は態度を変えてるだけ」
「そうだな、じゃないとユキは直ぐに話脱線するからな!」
「ちょっと!それはヒロだってそうでしょう。気を抜くと直ぐ猫の話ばかり」
「いいじゃん!猫最高!猫万歳!猫が地球を救うまである!」
「でた、その謎の理論。もうそこまで好きなら猫カフェでも経営したら?」
「いいねー、それっ!!いや、むしろどっかの無人島買い取って俺のネコランドでも作るか!」
「はいはい、お好きにどーぞ」
「あ、あの〜…お二人ってひょっとして、、恋人で・・」
「「絶対ない(わ)!!!」」
(息ぴったりなんですけど。。)
「そ、そうなんですね…しし失礼しました。・・あの、ところで、おお時間は、だイジョウブでしょうか?」
あっ。。
「ごめんなさい。切り替えましょうか」
「失礼しました今野さん、ありがとう。それじゃ早速今回の書類を見て頂きましょうか。今野さんも入ったばかりとのことだけど、よかったら樋口さんと一緒に見て感想を貰えると助かる」
「しょ、承知いたしました!(…この二人なら)」
二時間くらい経っただろうか。気づけばお昼を少し過ぎた時間になり、ふと外を眺めるとランチに向かっていたであろうサラリーマン・OL等お勤めの方々が続々と限られたランチタイムの戦場をあとにして自身の陣地へと帰還するところのようだ。エネルギー消費の大きい生き方に敬礼!(わかる人にはわかるネタのはず)
「そろそろいい時間ですね。この辺りにして本日はお開きと致しましょうか。正啓さん、本日はわざわざお越し頂きありがとうございました。」
「いえ、こちらは大丈夫ですよ。今野さんも今日はお疲れ様でした。」
「は、はい!本日はお時間賜りありがとうございましたっ!!」
最初の方に比べればだいぶ流暢に話せるようになった彼女を見て、なんとなく微笑ましく思えた。
それと同時に、最初はただのおっちょこちょい程度でしか見ていなかったけど、ユキが最初に言っていた通り、どうやら仕事はちゃんと出来るようで要点をしっかりと抑え、無駄なく資料をまとめていたのを見て安心もした。
この後はジムに行ってランチと思っていたけど、テツオの店に行くとなると微妙な時間かな。
「ところで、正啓さんはこの後のご予定は?」
「ん?あー、ジムに行ってその後知り合いの、というかテツオの店にでも行こうかなと思ってたんだけど」
「そうなんだ!私たち、次の予定が夕方だから時間持て余してて。よかったら一緒してもいい?私も久しぶりにテツオに会いたいかな!」
まー、別に構わないか。特に一人じゃなきゃいけない理由もないし。
「いいよ、せっかくだし行こうか。今野さんもそれでいいかな?」
「は、はい!ところでその・・テツオさんというのは?」
「あーごめんなさいね。私たちの同級生で今は喫茶店をやっているのよ。ここからちょっと離れてるんだけどね。彼の作るオムハヤシは絶品よ!」
「そうだったんですね!是非ご一緒させてください!」
話の流れで了承してしまったが、必然的にジムに行くのは難しそうだな。流石にジムに行ってる間待ってもらうのは申し訳ないと思い、このまま3人でお店に向かうこととなった。春日駅近くでやっているため、ここ目黒から三田線で一本で行けるから移動には困らないのがいい。テツオナイス!
現在14時前くらいだから、14時半過ぎには着くだろう。その時間にもなればさすがにお昼のピークも過ぎてるだろうから落ち着いてランチも出来そうだ。この時間だと恐らく見れないだろうと思いつつも、一応テツオに今か行くことをRINEしておく。
カフェを出て駅に入り、電車を待っているといつもより人が多いことにふと疑問を覚える。
「なんだか今日は人が多いな」
「そうね、いつもこの時間は結構空いている気がするんだけど、何かイベントでもあるのかしら?」
「・・・・・」
そんな何気ない会話をしながら電車を待っていると、もうすぐ到着するというアナウンスが流れてきた。
「お二人とも、少しお話ししたいことがあります。」
気を遣ってか、お店を出る直前から今までずっと無言で後ろからついてきていた今野さんが話しかけてきた。唐突にどうしたんだろうと彼女に目を向けていると、真っ直ぐ俺たち2人の目を交互に見て口を開いた。
『貴方達に一度死んで頂きたいのです』
突然の言葉に反応できずにいると、周りにいた人々が自分達の方へどんどん押し寄せてきた。それはまるで、これから列車に乗り込む朝の通勤電車の如く。しかし、電車はまだ駅に到着していない。というより丁度ホームに入ってきたところだった。いくら人が多いからとはいえ、朝の通勤時に比べれば構内にゆとりは全然ある。
にも関わらずこれから椅子取りゲームでも始めるかの如く、どんどん人が押し寄せてくる。本能的に危険を感じ取り、ユキの肩を取り抱き寄せると彼女は混乱しているようで、目が泳いでおり言葉が出ずにいる。
「今野さん、さっきの言葉の意味って・・」
恐る恐る彼女に質問を投げかけてみる。さっきまでのオドオドとした態度が嘘のように、落ち着いた、でも芯のしっかりした瞳でこちらをジッと見つめながら、再び口を開いた。
『貴方達ならーーー』
その言葉が聞こえたのと同時に、人々が更に勢いを増して押し寄せてきた。まるでドミノ倒しにあったかのように、その勢いが増して俺たち2人を押し進めてくる。なんとか踏みとどまり体勢を立て直そうとしたものの、これだけ多くの人の力を俺1人の力で押し退けることは不可能だった。
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突然、横から大きな警笛が聞こえてくる。その音にびっくりして目をやると、電車が目前に迫っていた。しかも何故か電車が斜めになっている。訳がわからない状況下の中、何故か妙に冷静になっている自分をよく見ると、左手でユキを抱きかかえ、正面には先ほどの人々が大群で黄色い線のギリギリまで押し寄せている。自分達はというと、ホームから少しずつ離れているのが分かる。それも歩いているのではなく、倒れるようにして…
そこでようやく気がついた。
あ、俺が線路に向かって倒れているから電車が斜めに見えてるんだと。
そしてこれは事故ではなく、故意に突き飛ばされたんだということも。
更にここで、先の彼女の言葉が思い起こされる。
『一度死んで頂きたいのです』
『貴方達ならーーー』
その言葉を言った本人に目をやると、憐れみの目を向け、ざまあみろという様な悪質な顔をしているのかと思いきや、とても真剣に、まるで願いを込めて祈りを込めるかのような力強い目線を感じた。
刹那の中、目前に迫った電車の警笛の音が耳を突いてくる中で、せめて抱きかかえてるユキだけでもと思い、渾身の力を振り絞って避難スペースの方へ投げ飛ばす。かすり傷くらいの怪我はするかもしれないが、それくらいは我慢してもらおう。
自らに“死”が迫っているのを確信しているにもかかわらず、未だに冷静な自分に可笑しくなりながら、ユキを少しでも安心させようと笑顔を向ける。
こういう、“死ぬ”直前って走馬灯が走るとか、やたらスローモーションになるとか言うけど、本当なんだなー・・
なんて呑気なことを考えながら、ゆっくりと倒れていく自分・迫り来る電車・投げ飛ばしたユキを見ながら
『死んだら転生できるかな?』
なんて思った瞬間、右側に衝撃が走り、痛みをほぼ感じることもないまま意識が途絶えた。
初めまして!イトツと申します。よろしくお願いいたします。
この度、小説家になろうで初連載をすることにいたしました。
これまでは二次創作を別のところで投稿しておりましたが、これからはオリジナル作品にも積極的にチャレンジしていこうとこちらに参りました。
まだまだ拙いところが多々ありますが、一人でも多くの方に楽しんでいただけたら幸いです!
よろしくお願いいたします(^^)/