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epsode1~白い結婚と忘れられない思い出~

 皆様新年あけましておめでとうございます! 

 お正月はどうお過ごしになりましたでしょうか?

 私は今までに買った漫画を読み漁っていました。怠惰です…、それはさておき、お久しぶりの投稿&新連載スタートとなります!!

 実は前作をメモしていたデータが吹っ飛び思い出し思い出しで書いている状態になっております…。なんとか書き上げますのでもうしばらくお待ち頂ければと…すみません……。

 今作は完結まで朝夜6時の予約投稿です。一話一話の文字数少し多めの作品となっております!元々短編にするつもりが気付けば3万を超えていたので急遽連載になりました( ˊᵕˋ ;)

 どうか完結まで温かい目で見て頂けると幸いです!

 2025年もどうぞよろしくお願いいたします!!

今日、俺は好いてもいない女と結婚した。ただし、これはあくまで白い結婚だ。


 夜会やパーティーに顔を出せば出すほど令嬢たちからの求婚の手紙が山ほど送られてくる。

 その上、父からも婚約を結べという圧もかかっていた。そんな毎日にうんざりしていた。


 そこで、【手中に収めやすい、自分より幾分か歳が下であり、爵位も下。婚約者もおらずあまり表に顔を出していない令嬢】を探した。


 完璧に当てはまる令嬢は流石にいないと思っていたのだが、思いの外早く見つかった。

 結果、青のライラックのような瞳にスノーホワイトの髪色という珍しい色彩を持つウォートリー子爵家の令嬢である、エヴァリーナ・ウォートリーと婚約を結び、一週間後である今日に籍を入れた。貴族にしては異常な速さであることは分かっていた。


 結婚式はしなかった。所詮はお飾りの妻に、そんな大層なことをする必要はないと考えたから。

 お飾りの妻だと伝えれば、どんな反応をするだろうか。正直なところ、なんだって構わない。予想は着いている。


 癇癪を起こすか、お飾りなのを理由に、散財するか、愛人をつくるか、はたまた俺を惚れさせようとしてくるのか。なんだって良いが、俺は微塵も結婚に、そもそも女性に興味がないのだ。


 金しか見ない人間を、名声しか見ない人間を、権力しか見ない人間を、爵位しか見ない人間を、男女関係なく俺はどうしたって興味すら持てなければ愛せもしない。ただ1人の、お喋り好きな女性を除いて…。


 《《まだ幼子だった時、愛人をつくって夜に遊びに行く母にも、そのことに全く興味を持たず、俺に剣の才も魔法の才もないと分かった途端に失望し、爵位を継がせるわけにはいかないと言ってきた父にもうんざりしていた俺は、使用人の目を盗み見て屋敷を抜け出した。

 今にして思えば、随分と達観した子供だと自分でも思うほどだった。


 だが、それほどに息苦しかった。

 屋敷で生まれ育ってきたはずなのに、まるで自分の居場所ではないと言われているみたいで、酷く居心地が悪かった。

 走って、走って、領地の中で誰にも見つけられないような場所へ行きたいと、強く願いながら走った。


 どれくらい走ったのかは分からなかった。誘われるままに走った。

 訓練で身に付いた体力も底を付き、導いてくれるかのように吹いていた追い風も止まり、ようやく足を止めて前を見ると、そこには十尺先に広がる白い花と大きな広葉樹以外、何もなかった。


 領地は広いため抜け出せるほど走っていないはずなのに、ここは領地にないような場所だ。

 知らない場所に身を置いて怖いような、何故か安心するような、妙な感覚に襲われた。

 

 それでいて花や木の葉は風に揺られてそよそよと心地よい音を立てる。

 思わず目の前の柔らかく揺れる白い花に見惚れていると、1人の少女が突然声を上げ、質問を投げてきた。


『わわっ、びっくり。あなたはだれ?』


 自分よりも1つ2つくらい歳の離れた女の子が横から顔を覗かせた。驚いた俺は、数歩後退り警戒した。 すると、女の子は途端に愉快そうに笑って見せた。 短めのスノーホワイトの髪を揺らして、丸い秘色の目をさらに丸くさせる。


『あはは!お兄さん、大丈夫だよ』

『えっ?』

『ここには悪い大人も、怖い人も、誰もいないの』


 不思議な子だった。


 いないはずはなかった。いつも領は人で賑わっている。色んな私欲を抱えた人間も、慈愛に満ちた人間も、犯罪に手を染めて果てる人間も。

 もちろん、愛人ばかりつくる母親も、俺に失望し今までの努力を全て無かったことにしようとする父親も俺など探さず屋敷にいるだろう。


 だがどうしてか、女の子がいないといえば、本当にいないような気がした。

 事実、人の声は目の前にいる女の子以外に聞こえない。子供の時の俺は、不思議にもその事実に違和感を覚えなかった。


『本当に、誰もいないんだね』

『うん!ね、お兄さん、名前を教えて!今日だけ特別に、わたしのこの場所を貸してあげる。お兄さんも今辛そうだから!』

『…君は、凄いね。僕はノアだよ。ねえ、君の名前も教えてよ。それと、ここはどこなのか、どうして君がここにいるのか、出来たら帰り方も教えてくれる?』

 

 出来るだけ優しく、女の子を怯えさせないように優しく言葉を添えたのを覚えている。

 女の子はしばらくうーんと唸った後、また溌剌とした笑顔へ戻った。


『分かった。えっとね…。リー…、リーって呼んで!それと、ノアが気になってるのは、きっとこっちだよね。ここはどこなのかを聞きたいんでしょ?』

『…!』


 口調はとても子供らしい、年相応の話し方。

 なのに、いくつかの質問の中から相手が本当に知りたいことを的確に当ててくる姿は、とても大人びて見えた。


『リーは、どうしてそう思うの?』

『うーん、分かんない!なんとなくだよ。おかあさまやおとうさまのお顔を見てたら分かるようになったの。それより、ノアの気になってること教えてあげる!ここはわたしが魔法で作った空間だよ!』

『まほう…?』


 にわかには信じられなかった。まだ自分より幾分も幼い女の子が、上級に近い魔法を使っている。これは天性の才能だ。何故、こんなところにいるのか。

 両親はさぞ、この子を大切にしているだろう。

 こんなところにいては心配で探しに来るのではないか。だというのに、無邪気に女の子はこの場所について楽しそうに話をし始めた。


『うん!辛くなった時は、わたしが魔法を使って作ったこの場所に1人でいるの!だからノアが来た時ね!凄くびっくりしたんだぁ!今まで誰も入ってこなかったから、誰も来られないと思ってた』

『…そっか、勝手に入ってごめんね』

『ううん!いいの!お話出来る人が来てくれて嬉しい!ありがとう!』


 人が安らぐために使用している場所を俺が土足で立ち入ったにも関わらず、詰め寄るどころかお礼を言われるなんて思ってなかった。

 俺よりもずっと賢く、純粋で、屈託のない笑みを浮かべて心底嬉しそうにしている。

 俺の見ている世界は、もしかするととてつもなく狭かったのかもしれないと思った。


『…リーは、優しいな。それでいて、魔法も上手だ。こんなに綺麗な魔法を使えるのは、少し羨ましいな』


 ポロッと、そんな言葉が漏れた。言うつもりはなかったが、本心ではあった。褒めたつもりだった。自分にはないものが、羨ましく感じたから。

 だがリーにとって、この言葉は傷つける言葉なのだと、子供ながらに分かってしまった。


 それまでずっとニコニコしていた顔が、一瞬にして無になったのだ。

 やはりこれは夢なのではないかと錯覚するほどの表情の違いだった。

 正確には、笑ってはいる。だが違う。あの屈託のない笑みから、目のハイライトが消えた。まるで、女の子の、あの眩しいほどの笑顔が、全て意識的にしているかのようだった。


『……、わたしね、今日久しぶりに人とお話ししたの…。すごく楽しかったよ。来てくれて嬉しかった。魔法をきれいだって言ってくれて、嬉しかった。ありがとう…。でもね、わたしのことを羨ましいと思ってしまうなら、ノアはきっと落ち込むことないよ。だから、早く戻った方が良い』

『…!それは、どうして…?』

 

 俺と話をして楽しかったんじゃないのか、嬉しかったんじゃないのか、魔法を褒めてもらえて嬉しかったんじゃないのか。なのに何故、リーは拒絶する?

 これら全ての疑問を含めた『どうして』だった。


 リーは俺の質問には答えなかった。

 代わりに、とある約束をした。またあの、これから何年も忘れられないような無邪気な笑顔で。


『ないしょ。とにかく!ノアはもう少し自分のおとうさまとお話してみたら良いと思う!きっとノアのおとうさまは口下手なだけだから!それでも分かり合えなかったら、私が隣で支えてあげる!少し時間はかかるけど、絶対ノアのところに行って、ノアが心から笑顔になれるようにしてあげるね!』


 途端に強い向かい風が吹き咄嗟に目を瞑った。次に目を開けた時にはあの幻想的な景色は消え失せ、いつもの見覚えある父が治める領地へと戻っていた。》》


 自分の居場所もわからない。誰を信用して良いのかも分からない。そんな状況で、見知らぬ少女との約束を何年も何年も信じて待つほどに、俺はあの時、精神が参っていたのだろう。

 その精神的に参っていた時期から何年も経っているというのに、俺の心を救ってくれた、あの嘘つきでお喋りな少女を忘れることが、未だに出来ずにいた。


 嘘はあまり好きでは無い。一時は救われるかもしれないが、嘘は後々嘘をつかれた人を苦しめる。現に俺だって、中途半端な気持ちのままだ。

 だから今のうちにはっきりさせて、変な期待は持たないでもらう。

 その方が、お飾りの妻役をしてもらうために婚約を結んだ彼女にとっても良いだろう。


 今から言うことを理解してくれなくとも構わない。 ただそれが真実であるのだから、否定だけはしないでほしい。俺から彼女に願うのはそれだけだった。


























最後まで閲覧して頂きありがとうございましたm(_ _)m

次話も見てくださると嬉しいです♪

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