善人しかいなかったら面白くない
善ばかり書いていても『面白い物語』にはなり得ません。
エンターテイメントにおいて『悪事』は華です。それを取り除いた物語は、平坦とした印象を与えてしまいます。ただ日常がそこにあるだけではつまらないんですね。
なので、基本的に私は『悪事』を土台として、その上に『日常』を置きます。
日常のシーンを描く場合、私は必ず敵を示唆した後と決めています。
そうすることで、水面下で動く敵がいて、ふとした拍子に崩れてしまいそうな日常の尊さというものが演出できるんですよ。
私は必ず序盤の方で日常のシーンを入れる手癖があります。それはキャラクターに愛着を持ってもらうためでもありますし、主人公の日常の儚さを知ってもらうためだったり、これから『奪われる』主人公に、より感情移入してもらうためでもあります。
前の講座で例として主人公の幼馴染を殺したと思いますが、殺す前に日常を入れてみると、もっと主人公に残酷になって、更に面白い物語になると思いますよ。
といっても、暗すぎる物語は流行らないのでほどほどにしてください。
主人公に適度に希望を与えながら、適切な試練を与えましょう。試練を乗り越えるたびに何かを得て、嬉しくなって――そして、終盤辺りで絶望してもらいます。
絶望の理由は敵の登場です!
詳しいタイミングなどは後述する『56カード法』で説明しますが、大まかに物語の中間あたりだと思ってください。中間で敵が登場して、物語の緊張感が上昇します。
中盤より前にも敵は存在します。ただ、中盤以降に現れる敵はただの敵じゃありません。
魅力的な敵である必要があります。
それは、そう簡単に倒せないボスのような存在です。でも倒せないだけですか? 魅力的な敵ってなんでしょうか。魅力的な敵って、ただ強いんですか? 意味もなく主人公と対立して、暴力を振るんでしょうか?
違いますよね。
魅力的な敵とは、主人公が明確に対立する必要のある存在です。
そいつを殺せば全てが終わりとか、そいつを打ち倒せば全てが解決してしまうような、いったん、物語を終わらせるために必要な要素を持つ敵。それが魅力的な敵の前提条件です。
・倒せば(一旦)物語が終わる。
それだけではありません。敵ですからね、『悪い』必要があります。
主人公に対して、悪役なら悪逆非道を尽くしましょう。家族を殺してもいいし、信念を折ってもいい。とにかくそいつだけは、絶対に倒さなければいけないと主人公に思わせてください。
主人公が「許せない」と言って、それに読者が共感できたのなら、もうそいつは魅力的な敵をやっています。
・敵を倒さなければいけない理由が共感できる。
この二つが、魅力的な敵の条件です。
倒せば物語は終わりです。そいつを倒すことで、問題が解決するんです。
物語の終了条件と、倒さなければいけない必然性を併せ持つのが魅力的な敵という奴です。
倒せば物語が終わるというのは分かりやすいと思いますが、敵を倒す必然性っていうものが、幅が広くて難しいポイントでもあります。素直に殺された家族の敵とかにしておくのが分かりやすいですかね。
世界を守るためだとか、ふざけたことは主人公に言わせないでください。共感できないので。もっと身近なもののために頑張らせましょう。世界を滅ぶ≒家族が死ぬ。家族を守るために俺は戦う! とかならまだ理解できますよね。必然性はできる限り身近なものにしましょう。
とにかく、面白い物語には魅力的な敵が必要なんです。
そろそろ初級編も終わりです。
ここまでで、絶対に知るべき基礎のようなものは終わりました。
最後にまとめをしてから、技法や構成を一緒に学んでいきましょう。




